インナーブランディングの手法や施策と成功事例5選

インナーブランディングで従業員の意識を統一しよう

マーケティングにおいて勝ち抜いていける企業になるためには、競合他社よりも早く魅力的な商品やサービスを開発し、消費者に対して積極的にプロモーション活動を行うことが必須となります。しかしながら、そういったことは単に有能な経営陣を揃えれば可能になるだけではありません。もちろん経営陣が有能で状況に対して柔軟に対応できることも重要ですが、それだけではなく企業を構成する従業員たちの意識を統一させていかなければなりません。

一つの商品やサービスを作り出す時、従業員の意識が統一されているのとされていないのでは効率が大きく異なってきます。前者は「なぜこれが必要か」を従業員が分かっているため、さらに求められる商品やサービスにするための改善案も積極的に出てくるでしょう。しかし、後者の場合は「特に理由が分からないけど、言われた業務をこなそう」という受動的な態度での仕事になるため改善案が積極的に出てくることはありません。もちろん企業の思惑を察知して能動的に働けるような個人のパフォーマンスが優れている従業員も中にはいるかもしれませんが、一般的には受動的な働き方では効率も落ちてしまいますし従業員のモチベーションが上がることもありません。

そうした状況を打破し、従業員のモチベーションを高めて能動的な意見が出やすい職場に変えるための方法としてよく知られているのがインナーブランディングという手法です。インナーブランディングを活用することにより、組織としてさらに成熟した組織となることができるでしょう。さらに、営業職のように成績が数字に反映されて自分でもモチベーションを保ちやすい職種ばかりではなく、内勤の経理や総務といった仕事の成果が見えづらい従業員たちのモチベーションも大きく高めることが可能になります。従業員の意識を統一し組織としての生産性を高めていくためにもインナーブランディングの概念を理解し、活用していきましょう。

インナーブランディングの基礎知識

そもそもインナーブランディングとはどのようなものをいうのでしょうか。似た語感のマーケティング用語として「ブランドマーケティング」を連想する人も多いかもしれません。しかしブランドマーケティングは会社外部の消費者に対して自社のブランドを意識させるマーケティング手法ですので、組織の生産性とは直接的な関係性を持っていません。では、果たしてインナーブランディングとはどのようなものなのでしょうか。ここでは定義や対義語のアウターブランディングとの違いについて確認していきましょう。

インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、冒頭から解説している通り企業が自社の従業員に向けて行うブランディング戦略のことを意味します。インナーブランディングの他にインターナルブランディング・インナーマーケティング・インターナルマーケティングなど異なる呼び方をされることも珍しくはありませんが、本稿ではインナーブランディングという呼称で統一していきます。

インナーブランディングの目的としては、企業のブランド価値や企業理念などを従業員に正しく理解してもらうことが重要です。従業員に共感させることにより、そのブランド価値や企業理念などに沿って従業員の行動を統一させることが期待でき、企業が現時点よりも上の生産性を持ち成長していくためには必要不可欠だと言われています。業種によってはインナーブランディングを行わなくても消費者から求められる企業になることも不可能ではありませんが、一定のレベルを超えて成長していくためにはインナーブランディングの概念を有効活用しなければならないでしょう。

従業員が自身の所属する企業に理念やサービス精神に対して共感を持ち、貢献したいと思うことによって企業の生産性が高まるだけではありません。企業の生産性が高まると同時に従業員のエンゲージメントの向上にも寄与することができ、さらに生鮮性を高めることが期待できるのです。つまり帰属意識が高まり、従業員自身だけではなく従業員の家族や友達からも「良い企業だ」という認識を持たれて世間的なイメージ向上も期待できるでしょう。簡単に言えば、インナーブランディングを高めることで従業員が気持ち良く働ける環境になり生産性が大きく高まるなど多くのメリットを享受できるようになります。

アウターブランディングとの違い

一方、インナーブランディングの対義語としてアウターブランディングという言葉も知られています。こちらのアウターブランディングはブランドマーケティングの考え方に非常に近く、消費者や株主といった外部の存在に対して商品やサービスの価値、企業の価値や企業理念を伝えるブランディングを意味します。こうした外部の存在に企業理念などを深く理解してもらうことで、共感を呼び「あの企業の商品やサービスを利用して貢献したい」という理由で売上額をアップさせることも可能になります。

ただし、アウターブランディングに関して一点注意しておかなければならないのは、単純に消費者が株主といった売上額や企業の存続に大きく関わる分かりやすい存在だけが対象にならないという点です。たとえば企業のOBやOGもアウターブランディングの対象となりますし、採用中の学生あるいはまだ消費者としての力を持たない小学生や中学生も広義で考えると対象となるでしょう。仮に20代女性向けの商品やサービスを展開している企業であっても、50代の男性や70代の女性がアウターブランディングの対象とならないわけではありません。短期的な視点でのみアウターブランディングの対象者を決めてしまうと、思わぬとろこで損失が生じる可能性があるので注意しておきましょう。

インナーブランディングのメリット

ここまででも従業員のモチベーションの高まりや企業の生産性の上昇などインナーブランディングを行うことによるメリットは既に紹介してきました。しかし、ここで今一度インナーブランディングがもたらすメリットについて、大きなものを3つ確認していきましょう。

経営計画の実現

従業員としては自分の半期あるいは通期の目標しか気にしないケースも少なくはありませんが、企業としては三年後、あるいは七年後などの中長期の経営計画を立てていることも珍しくはありません。売上額だけではなく従業員数や設備、利益率など色々な角度で目標を設定しているでしょう。実は、インナーブランディングを活用することで全社一丸となりこういった経営計画の実現可能性が高まります。

従業員一人一人の生産性が高まることはもちろん、社長や部長、営業所長といった条約から伝えられる方針や目標に対しても納得感が高まり、反発心を抱くことなく活動できるためパフォーマンスも向上していくでしょう。当然、社長だけでではなく部長や営業所長と言った上層部と多くの従業員との橋渡しを担う存在も、インナーブランディングによって企業理念を深く理解することで発言に説得力が増し、結果的に部下からの求心力も高まります。

上司から目標を設定された従業員自身も、上司の言葉に説得力があり自分自身も企業理念に共感しているため、自分の成績や給料のためだけではなく企業の発展や社会貢献なども目的として業務を遂行することができるでしょう。それにより組織としても自然と優秀な人材が増え、経営計画の実現可能性がさらに高まるという良い循環が生まれていきます。

顧客満足度の向上

社員が自分の営業成績や給料のため、あるいは「上司に怒られないようにするため」といったネガティブな理由ではなく、企業をより発展させるように行動するようになることがインナーブランディングのメリットの一つです。そうなると既に紹介したように企業の業績が上がり経営計画の実現可能性も高まるでしょう。しかし、インナーブランディングによってもたらされるメリットはそれだけではありません。従業員は企業のためだけではなく自然と消費者のためにも行動するようになっていきます。そうなると顧客が企業に対して抱く顧客エンゲージメントが高まり、企業にとっては顧客の囲い込みができるようになるでしょう。自然と企業の競争力自体も高まる結果がもたらされるのです。

このインナーブランディングによる顧客満足度の向上には、アウターブランディングとの相乗効果も期待できます。アウターブランディングによって企業が積極的に顧客満足度を高めるだけでも効果は期待できますが、残念ながら企業から社会貢献をアピールされても大半の消費者はそれほど関心を持ちません。しかし、実際に店頭で接する従業員やコールセンターの従業員からエンゲージメントは大きく向上するでしょう。すなわち、アウターブランディングだけではどうしても限界がある顧客エンゲージメントの向上を、インナーブランディングによって補助することも期待できるのです。

従業員定着率の向上

インナーブランディングによって顧客のエンゲージメントが向上するのは、企業にとって確かに嬉しい効果ではあるものの副次的な効果に過ぎません。やはりインナーブランディングの最も大きなメリットといえば従業員からのエンゲージメントが高まることです。実は、この従業員エンゲージメントの高まりは社員の離職率を下げ定着率を高めるという影響ももたらしてくれるのです。社員の離職率が下がることにより、教育にかかるコストを削減することができるのは明らかでしょう。さらに離職率が低い企業は新卒採用や中途採用でも強みとなり、ますます優秀な人材が集まりやすくなります。

優秀な人材が集まることによって、社内の環境も今までより大きく改善されてさらに定着率は高まるでしょう。そうすると社内環境の整備が進むことで、産休や育休に関しても男女問わず取りやすい制度が整備されたり、介護休暇など多くの人が利用しやすい制度も整えやすい企業となります。こうした制度が整備されることによって、ますます企業の生産性は高まっていくでしょう。従業員が自分の所属する企業に対してどの程度の満足感を抱いているのかということは数値化しづらい項目ですが、定着率が数年前と比べて明らかに下がっているのであれば従業員からのエンゲージメントは高まっていると判断しても良いのではないでしょうか。

インナーブランディングの進め方

「従業員が企業に対して帰属意識を持ち自主的に働いていくことで企業の生産性が高まり顧客からのエンゲージメントも上がり選ばれる企業になる」というのは分かりやすい理論です。しかし、実際には従業員は充実した働き方をしたい人ばかりではありません。中には達成感ややりがいよりも楽な働き方、高い給料よりも低くても良いから責任感の少ない仕事を求めるという人もいるでしょう。もちろん、企業理念をどれだけ浸透させようとしても、そもそも企業理念を理解したがらないという人もいます。

では、実際にインナーブランディングはどのような進め方をしていくのが良いのでしょうか。ここではインナーブランディングを進める際に辿りたい3つのステップを紹介していきます。

ミッション・ビジョン・バリューの設定

まずは従業員に浸透させる企業理念をしっかり設定しなければなりません。「企業がなぜ存在しているか」、「なぜこの企業がなくてはならないのか」といった企業理念を企業のミッションやビジョンと呼び、「企業がどのように行動していくべきか」といった行動規範をバリューと呼びます。このミッション・ビジョン・バリューを全て明確に設定することが、インナーブランディングを進める上で最初に考えなければならないことです。

もちろん、従業員としては「自分自身の生活を維持するため」や「良い暮らしをするため」あるいは「ここの企業しか内定をもらえなかったから」という理由で働いている人も少なくはないでしょう。しかし、そうした従業員に対しても企業理念を浸透させることで目的意識を持って働いてもらうようにするのがインナーブランディングです。従業員自身が「給料をもらうのならば他の企業でももらえるのに、それでもなぜあえてこの企業で働いているのか」が明確になるように設定していきましょう。ちなみに、まだ浸透はしきっていないもののしっかり設定されている場合は、このステップは省略しても構いません。

バリューの浸透

インナーブランディングを進めるための1つ目のステップで設定する企業理念ですが、その企業理念は当然ながら社長や執行役員といった上層部だけが把握していれば良いだけではありません。上層部が深く把握するのは当然のこととして、従業員一人一人にどのように働くべきかを施策を通して浸透させていく必要があります。従業員へのバリューの浸透が、インナーブランディングを進める上での2つ目のステップといえるでしょう。

この2つ目のステップで注意しなければならないのは、「こう働くべきである」という押しつけを行わないことです。上層部が明確な指示を出し企業理念の通りに行動する従業員に成長させたとしても、そこには従業員自身の能動的な意思がないためインナーブランディングが成功しているとはいえません。また、日本の企業では入社時の研修において企業理念を暗記させて毎日の朝礼で暗唱させる企業もありますが、これも意味がありません。仮に企業理念を暗記できているとしても、それは単に音を覚えているだけで意味を理解していなければ無意味な行為となってしまいます。

インナーブランディングとは、企業理念を浸透させる際に一言一句覚えることを目的としているわけではありません。あくまで企業として最低限の行動規範を伝えるのみに留め、その後は現場レベルで従業員自身が状況に応じて企業理念に基づいた正しい思考ができるように導いていかなければならないのです。

事業のブランド価値の浸透

従業員たちが企業理念をしっかり理解した後は、最後のステップとして自分が所属している企業がどのようなブランド価値を持っているのかを浸透させなければなりません。単に企業理念を理解しただけでは、自分の仕事がどのように社会の役に立っているかを実感できずにやりがいを失ってしまうこともあるでしょう。場合によっては競合他社の方が魅力的だと感じて転職してしまうケースもあります。

しかし、自分が携わっている事業がどのように社会に貢献しているのか、事業の内容に対して消費者がどのような受け取り方をしているかを知ることができれば大きなやりがいになるでしょう。特に自分の仕事で消費者のエンゲージメントを高めていることが分かれば、たとえルーティンワークであっても高いモチベーションを持って取り組むことができます。経理や人事のように社外の人と直接関わることは少ない職種であっても、従業員のエンゲージメントを自分自身の仕事が高めていることを実感することでモチベーションになることもあるでしょう。

こうした事業のブランド価値、すなわち「この企業でなければならない」ということを理解させることで、インナーブランディングは初めて成功するのです。

インナーブランディングの代表的な施策

企業理念をいかに浸透させるかが肝となるインナーブランディングは、従業員と社長が直接話す機会を設ければ成功するというわけではありません。むしろ、そうした機会によって浸透させようとしても押しつけがましくなってしまい、インナーブランディングどころか従業員のエンゲージメントを著しく下げてしまう結果になりかねません。では、インナーブランディングを行うためにはどのような施策が適しているのでしょうか。ここでは代表的かつ真似しやすい4つの施策について解説していきます。

社内報・ポスター

企業の内部に社内の部署紹介や活動しているサークルの結果報告などを掲示しているポスターが貼られていたり、あるいは定期的に社内報として従業員一人一人に社内報が配られることもあるでしょう。企業理念が浸透していない企業の従業員の場合、そうしたポスターや社内報を「暇な部署が行っている無駄な仕事」あるいは「利益が出ないのに、どうしてこういう無駄なことをするのか」という批判的な視点で見てしまいがちです。

しかし、実はこうした社内報やポスターはインナーブランディングを進めるために非常に有効です。自分とは関わりのない部署の仕事内容を知ることで自分の仕事を進める役に立つこともあるでしょう。あるいは、今まで仕事以外は興味がなかった企業に対してもサークル活動などを知ることで自己実現の場としての興味が湧き帰属意識が高まるかもしれません。企業理念の浸透が進んでいないと社内報やポスターは無駄なものだと思われてしまいがちですが、浸透させるために一度作成してみるのも良いのではないでしょうか。

社員向けサイト

多くの企業は消費者が株主向けに公式ホームページを持ち情報発信をしていますが、実は社員だけに向けたサイトを持っているところは多くありません。しかし、そうした社員しかアクセスできないサイトもインナーブランディングを進める上で有効だと言われています。

社員向けサイトを構築することで、社員が必要な情報をいつでも提供できるようになります。福利厚生などの実際にベネフィットを実感しやすいものもあれば、社内報やポスターの内容のように社員が所属しているサークルの活動報告でも良いでしょう。いずれにせよ、社員向けサイトを構築することによって社員が好きな時にアクセスでき紙媒体よりも見やすいといったメリットがあります。もちろん自主的にアクセスしない社員には届かないというデメリットもあるので、社内報やポスターと連携しながら使い分けていくと良いでしょう。

社内イベント

社内報やポスター、そして社員向けサイトは社員が好きな時に企業理念を理解することができ、全国に支社があるような大きな企業であっても社員に浸透させやすいというメリットがあります。しかし、そうした書面のみでのコミュニケーションでは一方通行になってしまいがちなので真にインナーブランディングを行うことはできないでしょう。

たまには社内イベントなどでコミュニケーションを図り、インナーブランディングを行うことも大切です。帰属意識を持たない従業員にとっては、仕事以外の理由で企業に時間を拘束されるのはストレスにしかなりませんが、ある程度コミュニケーションがとれていれば社内イベントも楽しみにしてくれる従業員が多くなるでしょう。部署やチームごとに定期的な飲み会を開いているところは少なくないかと思いますが、時には支社規模・全社規模で社内イベントを開催するのも企業理念を浸透させてインナーブランディングを行う際には役立ちます。

研修・セミナー

社内報や社員向けのサイト、社内イベントというとインナーブランディングを進めるためとはいえ「楽しみ」の側面が強いように感じられて抵抗があるという人もいるでしょう。しかし、もちろんインナーブランディングを進める場合にそうした方法しかないわけではありません。たとえば社内の研修やセミナーといった活動も企業理念の浸透に役立つでしょう。

とはいえ、社長や人事部長の講演を一方的に聞くだけの研修やセミナーは、従業員のやる気をそいでしまい意味がありません。あくまで業務に役立つ研修やセミナーを通して、企業理念を浸透させて従業員が自ら自分自身のインナーブランディングを進めていくような仕組みを作る方が良いでしょう。企業理念は当然ながら企業ごとに違うためどのような研修が適しているかを一概に断言することはできませんが、企業ごとに特色を活かしながら設計していくように考えるのがおすすめです。

インナーブランディングの成功事例5選

「従業員が自分から喜んで企業のために働く」という状況は、あまりにも理想的すぎて現実ではありえないと感じる人も多いのではないでしょうか。確かに、実際には100人いる従業員の全てが企業理念を同じレベルで理解して、同じように企業に貢献してくれるわけではありません。1人くらいは生活のために仕方なく働く従業員もいるかもしれませんし、部署や従業員の役職によっては企業理念の浸透度合いも変わってくるものです。しかし、それでも企業によってはインナーブランディングを成功させている事例も存在します。ここでは、インナーブランディングの実際の成功事例を5つ紹介していくので、ぜひ参考にしてください。

株式会社ユーザベース

ユーザーベースは、従業員の共通の価値観となるべき企業理念を浸透させるために独自のカルチャーブックを制作しています。このカルチャーブックは単なる冊子として文字だけで企業理念を従業員に浸透させるのではなく、従業員が抑えておくべき行動規範をイラストで表現し「すべきこと」、「すべきでないこと」を明文化しています。イラストにすることで分かりやすくしているだけではなく、文章で細かく指示しないことにより企業理念が絶対的なルールとして従業員を支配してしまうことがないように注意しながら制作していると言われています。

通常、企業理念はどのような形で浸透させている場合でも事業規模が拡大していくにつれ、上層部からの伝達内容はブレてしまいがちです。毎年の新入社員に浸透させるのもコストがかかってしまいますし、中途社員への浸透の場合はなおさら前職までの固定観念があるため難しくなることもあるでしょう。さらに、社長から直接伝えるのではなく多くの人を介在させることで内容が変わってしまうことも珍しくはありません。しかし、そうした事態もカルチャーブックのように分かりやすく明文化しているものがあることで避けることが可能です。たとえ企業理念が分からなくなってしまった場合でも、カルチャーブックを確認すれば従業員一人一人が理解して行動規範を取り戻すことができるでしょう。

Zappos社

インナーブランディングを行っているのは日本だけではありません。ザッポスというアメリカの企業もインナーブランディングを導入しています。ザッポスは従業員同士の社内表彰制度を導入し、モチベーションを社内で高められるような仕組みを構築しました。企業のバリューである企業理念を体現した人に対して社内通貨のZOLLARSを贈ることができるこの制度は、全従業員のモチベーションアップに貢献したと言われています。

社内で表彰制度を設けている企業は少なくありませんが、多くの場合は目標を達成した営業や優れたシステムを開発したエンジニア、社内外のコンペで受賞したデザイナーなどが受賞してしまいがちです。しかし、このザッポスのようにZOLLARSで社内の好きな人に投票できるのであれば、誰にでも平等にチャンスが生まれます。自分の営業活動をサポートしてくれた営業事務の人に贈ることもできれば、自身のサークル活動を見やすく取り上げてくれた社内報の作者に贈ることもできますし、開けづらい扉を直してくれた総務の人に贈るなどの使い方もできるでしょう。

日本の場合、制限を設けて運用しなければ自分自身の上司や評価者に贈ってしまう可能性はありますが、それでも社内表彰制度は普段あまり注目されない内勤の従業員のモチベーションを上げるために非常に有効な制度であると考えられています。

KPMG

KPMGは大手の監査法人ですが、2014年にインナーブランディングキャンペーンとして「あなたがここにいるのには理由がある」を開催したことで注目を集めました。このインナーブランディングキャンペーンでは世界各国の社員が「私の仕事の意味とは」に回答するインタビュー動画を作成し、それにより仕事の意義を全社に浸透させました。回答の中には大統領選や宇宙ステーションの建設プロジェクト、さらには大規模な人質解放事件に間接的に関わっているといったものもあり、それだけでも全従業員のモチベーションは大きくアップしたと言われています。

さらに、経営陣からも自分の仕事について積極的に発信することを奨励する働きかけがされました。これにより、社内サイトでは40,000件を超えるインタビュー動画が集まり多くの人が自分が会ったこともない社員の仕事内容に対して理解を深めることができたのです。監査法人などの事務作業が多い業種の場合、一般的な企業の内勤と同じように普段は単調な仕事が多く「自分ではなくても良いに違いない」という気持ちになってしまいがちです。しかしながら、大きな仕事をしている事実を再認識したり誰かの役に立っていることを実感したりすることで授業員のエンゲージメントを高めることが可能になるのです。通常、仕事をしていると社内の人に直接お礼を言われる機会はそれほど多くないので、社内表彰制度などと併用して活用していくのも良いのではないでしょうか。

株式会社アプリボット

アプリボットは、ゲームアプリの「グリモア」を製作している企業です。このアプリボットでは、ブランド価値を社内に広めるためにユーザーの声を紹介する社内報を毎月発行しています。社内報の発行は先ほどインナーブランディングの代表的な施策としても紹介したほどスタンダードな施策です。しかしながら、アプリボットでは開発メンバーのモチベーションを大きくアップさせることに寄与したと言われています。

通常、ゲームの開発メンバーはユーザーの声を実際に聞く機会を持っていません。もちろん口コミサイトなどを閲覧することである程度情報を仕入れることはできますが、そうしたサイトの口コミは偏りがある場合がほとんどです。そこで、社内報によって企業が実際に集めたユーザーの声を紹介することでモチベーションを高めるだけではなくユーザー目線の浸透も同時に行ったのです。

さらに、ゲーム会社というとデジタル化が進んでいる企業も多いものですが、アプリボットは敢えて紙ベースでの社内報の配布を行いました。これにより、直接手渡されることで社内報に目を通す社員が増え、従業員のモチベーションアップだけではなく企業理念の浸透も進みインナーブランディングに成功したと言われています。

株式会社アイワード

アイワードは、インナーブランディングの施策を日報と社内報の組み合わせによって35年という長期間にわたり行っている企業です。アイワードの全社員は毎日の仕事や生活の成果を日報に記入することが義務付けられていますが、それに対して経営者や部門長が毎日コメントを返してします。さらに記入した翌日には「フォーラム」という社内報に一部を掲載し、全社員に配布していると言われています。これにより、自分とは直接関わることのない遠くの部署の業務内容や従業員のことを理解することができるのです。

実際、毎日の日報の記入や提出を義務としている企業は多いでしょう。しかし大半の企業では、そうした日報に対して上司が目を通すことはあっても直接話すこともコメントをすることもなく、従業員は何のために日報を提出しているのか分からないまま義務感だけで仕方なく提出しているというケースも少なくはありません。しかし、アイワードでは必ずフィードバックを行うことで従業員の不満を解消しているのです。このように、企業として従業員に義務付けなければならないこともフィードバックの有無によってモチベーションが大きく異なることは覚えておくと良いでしょう。

インナーブランディング施策においてインフルエンサー起用が有効な理由

インナーブランディング施策というと、結果的に消費者のエンゲージメントを高めることはできても従業員のエンゲージメントを高めた副次的効果に過ぎないことは既に解説しています。アウターブランディングも企業にとっては非常に大切なものですが、インナーブランディングを行う時にはインナーブランディング、アウターブランディングを行う時にはアウターブランディング、と分けて行わなければどちらも中途半端になってしまいかねません。

では、マーケティングにおいてアウターブランディングすなわち企業の外に位置する消費者や株主に対するプロモーション方法として有用なインフルエンサーはインナーブランディングでは意味を為さないのでしょうか。

実は、インナーブランディング施策においてもインフルエンサーは高い効果を発揮します。とはいえ、企業のインナーブランディングに活用する場合のインフルエンサーは、他のマーケティングの用に美容系やグルメ系などジャンルにこだわらない方が良いでしょう。インナーブランディングに向けてインフルエンサーを起用する際には、できるだけ認知度が高く従業員に対する影響力の高いインフルエンサーを起用するのがおすすめです。インナーブランディング施策において、インフルエンサーは社内の広告塔として強い影響力を持つでしょう。すなわち、社長講話よりもインフルエンサーからの発信の方が受け入れられやすい場合も少なくはないのです。

さらに、インナーブランディングにインフルエンサーを起用する場合、ブランドイメージに合致していればそのままアウターブランディングへの起用を検討することもできます。基本的には分けて行わなければ意味がないインナーブランディングとアウターブランディングですが、インフルエンサーを起用する場合は同時に行うことも可能になります。これによりインフルエンサーの起用コストはもちろん、広報部などの時間的なコストも削減できるため非常に効率的になるでしょう。

インナーブランディングで生産性を高めていこう

インナーブランディングを行うことで、従業員の生産性を高めることが可能になります。企業の社内環境も改善することができるため、社員の定着率も上がり競合他社に対するアドバンテージを獲得することも可能になります。従業員に給料以外のやりがいを持たせてモチベーションを高めるのは容易ではないですが、試してみる価値はあるのではないでしょうか。

また、最後に解説したようにインフルエンサーの起用はインナーブランディングに対しても有効です。知名度の高いインフルエンサーを単純に起用する場合はフォロワー数等で選定することができますが、アウターブランディングにも起用していくことを考えればフォロワー数の多寡だけではなく企業のブランドイメージも含めて選定すべきでしょう。

多数のインフルエンサーの中から、知名度が高くかつ企業のブランドイメージと合致し、企業のターゲット層に対して影響力を持つインフルエンサーを探すのは至難の業です。見つけるための時間コストも多くかかってしまうでしょう。そういう場合は、ぜひトリドリマーケティングにご相談ください。弊社であれば、登録している多数のインフルエンサーの中から知名度が高くインナーブランディングに効果的で、ブランドイメージにも合いアウターブランディングにも起用できるインフルエンサーを紹介させていただけます。