ペルソナ設計の方法と実際のペルソナ事例3選

ペルソナ設計のコツを知りリアルなペルソナを作ろう

マーケティングの際には、できるだけ顧客の需要を読み取ることが重要だと言われています。そのために顧客に対してアンケートを行うこともあれば、最近ではWeb上で意見交換などを行う企業もあり、どの企業も顧客の需要を掴むために様々な工夫を凝らしています。

顧客の需要を掴むためには色々な方法がありますが、その中でもペルソナ設計は実際に行っている企業も多く、また成功例なども知られているため知名度の非常に高い方法でしょう。では、実際にペルソナを設計するためにはどのような方法で行っていけば良いのでしょうか。ペルソナやペルソナマーケティングに関する基礎知識やペルソナを設計するメリットとデメリット、実際にペルソナマーケティングを行う流れやペルソナマーケティングに成功した実例、そしてペルソナ設計を行う際に知っておかなければ注意点など、ペルソナに関することについて解説していきます。

ペルソナについての基礎知識

経営学について書かれた本などを読むと、ペルソナという言葉が登場する確率は非常に高いでしょう。しかしながら、実際にペルソナを設計した経験がないといまいち分かりづらいのが「ペルソナ」という存在です。そこで、ここでは実際にペルソナ設計やペルソナマーケティングを始める上で最低限知っておきたい基礎知識を一度確認していきます。

ペルソナとは

ペルソナとは、そもそも心理学者のユングが提唱した「人間の外的側面」を意味する言葉です。最近では、日常的に「仮面」などの意味で「ペルソナ」という言葉が使われることもあるでしょう。

経済学的に「ペルソナ」という言葉を使う時には、「対象となる人物の全体的な特徴」という意味で使われることが多いといえるでしょう。すなわち「その人の性別」、「その人の仕事」、「今後の人生設計」、「現在のライフスタイル」、「年収」といったようにその人の消費行動を決定するとされる様々な要素を総称して「ペルソナ」と呼ぶことができます。このペルソナを深く設定すればするほど、顧客の需要を想定しやすくなり顧客のためのマーケティング戦略を立案することができるようになります。一方、ペルソナを深く設定しすぎてしまうと戦略の対象者が限られてしまうという恐れもあります。ペルソナ設計の際には、その点に留意して行っていくようにしましょう。

ペルソナマーケティングとは

ペルソナマーケティングですが、こちらはその名の通りペルソナを用いたマーケティング戦略ということになります。すなわちあらかじめ設計したペルソナの需要を満たすようなマーケティング戦略を打ち立てることにより、設計したペルソナと共通項を多く持つ顧客の満足度を高め、消費行動を促進していくのです。

ペルソナをは設計する段階である程度今までの顧客の行動分析などが元になってはいるものの、設計したペルソナに対して100%合致する顧客はめったに存在しません。しかしながら、ペルソナの想定する行動様式に当てはまることによって顧客を掴むことができるのです。ペルソナを設計することにより既存の顧客のエンゲージメントを高めて囲い込みを強化することができるのはもちろん、既存の顧客と近い存在でありながらも現在は企業の顧客となっていない新規の顧客の取り込みが可能となることもあります。

ペルソナマーケティングとは、他のマーケティング戦略に比べて圧倒的に顧客の需要を重要視しているマーケティング戦略だといっても過言ではありません。顧客の需要を元に商品やサービスの内容だけではなくプロモーション活動の頻度や使用する媒体なども決定していくため、一度顧客の心を掴むことができれば大きな効果を発揮することができるのです。

ターゲットマーケティングとの違い

商品やサービスを最初に生み出した上で、需要あるいは潜在的なインサイトを持っていそうな顧客に対してアプローチしていく従来のマーケティング手法とは違い、最初にペルソナとを設計することで架空の顧客を生み出し、その顧客を満足させることができる商品やサービスを生み出すことで売上額を確保しようとするのがペルソナマーケティングです。従来のマーケティング戦略とは大きく違う戦略であることは一目瞭然でしょう。

一方で、よく知られているターゲットマーケティングとは酷似していて違いが分からないという人も多いでしょう。実際、ターゲットマーケティングとペルソナマーケティングは似ている存在として混同してしまっている人も少なくはありません。しかしながら、どちらも深く理解していくと大きな違いがあることが分かります。

たとえば、今回解説していくペルソナマーケティングは、商品やサービスにおいて典型的でありながら象徴的なユーザー層を設定していくマーケティング戦略です。すなわち、氏名や年齢だけではなく、性別や住んでいる地域、ペルソナの家族構成といった基本的な項目から、職業や会社での役職、年収や働いている環境、休日に行う趣味や普段の価値観、ライフスタイルといったプライベートな部分に至るまでを詳細に設定し、まるで実在している人物をモデルにしているかのように仮定することで、マーケティング戦略の方向性を決めて具体的な施策を決めていくのがペルソナマーケティングです。一方、似ているとはいえターゲット戦略はそこまで深く顧客を仮定することはありません。ターゲット戦略においては「30代の女性」や「20代の専業主婦」といったように一般的なカテゴライズに留まります。すなわち、似ているように思えてもペルソナマーケティングとターゲットマーケティングではターゲット設定の深さが圧倒的に違うのです。

たとえば一つの掃除機を売る場合でも、ペルソナマーケティングは「30代の独身女性で不規則な勤務体系、年収は高いが余暇の時間を確保することが難しいため普段から自動で掃除できれば良いのにという要望を抱えている」ということまで設計し、ルンバなどの自動掃除機の需要が高いと分析します。しかしターゲットマーケティングの場合は「30代の独身女性」ということまでしか設定しないため「気軽に使えるような軽量の掃除機」あるいは「充電式のコードレス掃除機で、気付いた時に掃除しやすい」などの需要を分析してコードレス掃除機を売り出すべきだという結論に至る場合もあります。

このように、ペルソナマーケティングとターゲットマーケティングでは売るべき商品や提供すべきサービスに対して明確な差が出ることも珍しくはありません。ただし、これはどちらの方が優れたマーケティング戦略であると一概に言えるわけではありません。実際、高くても自動掃除機を求める30代女性もいれば、少し安くて気軽に使えるコードレス掃除機の方が優れていると判断する30代女性もいるでしょう。あるいは、吸引力を重視して昔ながらのコード式掃除機の方が適していると考える人もいるかもしれません。つまり、ペルソナマーケティングとターゲットマーケティングに限らず、状況に応じて最適なマーケティング戦略を使い分けながら多角的に分析していくことが重要なのです。

ペルソナを設計するメリット・デメリット

相手を深く知ることができるペルソナマーケティングであるため、一度ハマると多くの顧客を一度に獲得することができます。しかしながら、実はペルソナマーケティングはメリットだけではなく多数のデメリットもあります。それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのか、ペルソナマーケティングについてチェックしてみましょう。

【メリット】顧客行動を予測しやすくなる

ターゲットとする顧客について深く仮定するペルソナマーケティングでは、顧客の行動を予測しやすいというメリットがあります。すなわち、「この年収帯で余暇の時間が少ないのであれば、高価なものでも時短できるものを買うに違いない」など、顧客の消費行動を想定しやすくなるのです。

そのため、ある程度の売上額を事前に想定することもできますし売上が生じるタイミングを企業の方で決定することもできるでしょう。すなわち、今後の企業の中長期的な経営計画を立てる上でもペルソナマーケティングは効果を発揮する場合があるのです。これは他のマーケティングではなかなか実現できないペルソナマーケティング独特のメリットだと考えられています。

【メリット】客層を選定できる

また、ペルソナマーケティングでは企業側が客層を選定することができます。たとえば「20代の女性で平均よりも年収が高く、華美なものよりもシンプルなものを好む女性」をターゲットに「質は良くても高価なためなかなか買うことはできないが20代女性の憧れの存在になりえるシンプルな雑貨」を売り出せば、実際に収入に余裕がありシンプルなものを好む20代の女性が購入していくでしょう。もちろん、場合によっては企業が予期していない10代女性や30代女性、あるいは20代男性が購入することもあるかもしれませんが、主軸の客層としては想定通りの客層になることが考えられます。

一方、先に顧客層を設定せずに商品やサービスを用意する場合は、客層の選定が非常に困難になります。もちろんプロモーション方法によってある程度ターゲットとなる客層に対してアプローチを集中的に行うことは可能ですが、「20代のプチプラ好きな女性をターゲットにしたはずなのに、女子高生の間で流行した」などのように予想外の売上が生まれることもあります。もちろん売上自体がきちんと発生すればそれほど問題はないケースが多いですしペルソナマーケティングでも予想外のターゲット層に好まれる場合もありますが、やはり他のマーケティング戦略に比べるとペルソナマーケティングの方が客層の選定はしやすいといえるでしょう。

【メリット】店舗の雰囲気を決めやすくなる

実店舗を持つ企業の場合、ペルソナマーケティングを活用することで店舗の雰囲気を決めやすくなります。立地として自家用車の有無によって立地を決めることもできますし、外観や内装なども設計したペルソナに合わせて決めていくことで、よりターゲット層のエンゲージメントを高めることができるでしょう。

さらに、早々にペルソナを設計することで社内の打ち合わせ段階でも分かりやすいというメリットがあります。「20代の女性でも、世間的に主張される華美な雰囲気に対しては気後れするため、シンプルな内装を好みつつそれほど高級店には行けない層が好むような内装」のような共通認識を持つことができれば、デザインの打ち合わせなどもスムーズに行えることでしょう。ペルソナマーケティングはこのような点でもメリットが存在しているマーケティング戦略です。

【メリット】プロモーション方針が早期に定まる

さらに、打ち合わせの段階でプロモーションの方針も早期に定めることができるというメリットもあります。ペルソナマーケティングでは、一般的な年齢や年収、ライフスタイルという項目の他に、最近では「よく使うSNS」や「情報収集を行う際に用いる媒体」といった要素も設計項目の中に組み込まれます。

すなわち「30代で年収に余裕がありシンプルな好む女性」の中でも「TwitterやFacebookよりもInstagramを主に利用している女性」をターゲットにしてプロモーション方針を定めることができます。このようにターゲット層が頻繁に利用しているSNSが分かれば広告出稿の準備もしやすくなりますし、当然ながらそのための予算も早期に確保することができます。さらにインフルエンサーを起用してプロモーションを行う場合には、かなり早い段階でインフルエンサーの選定が行えるため依頼や起用方法に関してもスムーズにこなしていことが可能になります。こうしたメリットも、早期にターゲット層を確定させるペルソナマーケティングならではのメリットだといえるでしょう。

【デメリット】ユーザー層が狭くなる

ペルソナマーケティングのメリットは、早期にペルソナを定めることで効率良くプロモーション活動が行え、企業が想定している売上を確保できるという点にあります。しかしながら、ペルソナを深く設計すればするほど商品やサービスを利用するユーザー層が狭くなってしまうというデメリットも忘れてはいけません。

実際「あなたの周りの30代女性」というと多くの人が思い浮かぶでしょう。しかし、その条件に加えて「既婚者」、「子どもは2人以上」、「共働きで世帯年収は800万円以上」、「職場は駅の近く」、「自家用車を持っている」のように条件を加えていくことで、どんどん該当する人物が減っていくことは実感できるのではないでしょうか。このように条件を増やすことでターゲットを絞り込み、効率的にプロモーションしていくのがペルソナマーケティングです。そのため、どうしても対象となるユーザー層が狭くなってしまうというデメリットは避けられません。

【デメリット】外した場合のリスクが大きくなる

ユーザー層が狭くなるペルソナマーケティングですので、外した場合のリスクが非常に大きくなってしまいます。たとえば「収入に余裕がないためプチプラが好きでシンプルな見た目が好きな20代の女性」をターゲットにした化粧品を売り出したとしましょう。これがしっかりターゲットとするユーザー層の好みに合っていれば、予想通りの売上を確保することができます。

しかしながら「20代の女性にとっては安っぽい商品になってしまい購入意欲が減退した」上に「プチプラとはいえ10代女性にとっては気軽に手を出せない商品なので購入されることがなかった」や「30代の女性にとっては認知すらされない商品」ということになってしまうと、企業は大量の在庫を抱えてしまうことになります。当然ながら、化粧品ですのでどの年代の男性であっても大きな需要が生まれることはめったにありません。

実際の市場には多くの消費者がいるのでこれほど単純にリスクを実感することはないかもしれませんが、それでもペルソナ設計を誤ってしまうとこのような事態を招く恐れがあることは十分に認識しておいた方が良いでしょう。

【デメリット】認知度が高まりづらい

あらかじめターゲットを絞ってプロモーション活動を効率的に行うペルソナマーケティングですので、必然的にターゲット以外には認知度が高まりづらいというデメリットがあります。通常通りのプロモーション活動を行っていればターゲットに想定していなかった層からも支持されることがあっても、プロモーション方法を限定してしまったばかりに認知される機会を失い損失を生み出してしまう恐れがあるでしょう。

さらに、プロモーション方法によっては「どうせこの企業は高収入の人しか見ていなくて、自分たちのことなんて相手にされていない」と企業全体に対するマイナスイメージを持たれてしまう恐れがあります。ペルソナマーケティングを行う際には、ターゲットに注力するだけではなく、それ以外の層からの好感度を下げないようにも留意してください。

ペルソナマーケティングの手法

それぞれメリットとデメリットがあるとはいえ、ペルソナマーケティングは顧客の需要を見極める上で非常に適したマーケティング戦略であることは間違いありません。では、実際にペルソナマーケティングを行う際にはどのような手順で行っていくのか、詳しい手法をみていきましょう。

自社分析

どのようなペルソナを設計する場合でも、まずは自社がどのような長所と短所を持っているのかを客観的に知らなければなりません。極論を言えば、どんなに詳しく20代女性のペルソナを設計してピッタリの化粧品を作りたいと企業が考えても、50代男性のスーツを専門的に作っていて化粧品に対するノウハウを全く持たない企業が簡単に参入しても成功することはありません。

そうしたペルソナと現在の業界、今後参入していく業界とのミスマッチを避けるために自社分析を行う必要があるのです。ペルソナマーケティングで自社分析を行う際には、一般的に「Customer(市場・顧客)」、「Competitor(競合)」、「Company(自社)」のそれぞれの強みや弱み、立ち位置や需要や規模を分析する3C分析が用いられます。企業としては、ついつい自社の強みにばかり目が行ってしまいがちですが、3C分析を使うことで商品やサービスの強みや弱みを客観的な視点から分析することができるでしょう。既に自社分析を行っている企業も、今まで3C分析を使ったことがないのであれば深掘りするために検討してみるのも良いのではないでしょうか。

ペルソナ設計項目を書き出す

自社分析が終わった後は、いよいよペルソナの設計に入っていきます。今まで既にペルソナを設計している場合は、あまりのも共通項が多いと新規のペルソナを設計する意味がないので注意して設計していきましょう。

ペルソナの設計項目は取り扱っている商品やサービス、そして企業規模や時代によっても大きく異なりますが、現在は最低限でも以下の項目は必須であると言われています。

●基本情報
氏名・年齢・性別・居住地・出身地・血液型・誕生日

●資産情報
学歴・職歴・職業(業界・業種・職種・役職含む)・年収・その他資産(株・不動産等)

●家族情報
家族構成(独身 or 既婚)・子ども(有無と年齢)・実家との距離

●ライフスタイル
起床時間・就寝時間・通勤時間・日々の食生活・休日の過ごし方・外食の頻度

●趣味関連
インドア派 or アウトドア派・よく聞く音楽・好きな雑誌・好きな映画

●目標設定
価値観・目標・判断基準・今後のライフプラン

●インターネット利用状況
主に使うデバイス・一日の利用時間・利用する時間帯・よく見るサイト・SNS

これが最低限の項目だと言われているため、業界によってはさらに細かく設定していくこともあるでしょう。たとえ化粧品の業界であれば、基礎化粧品に使っている金額や肌悩み、化粧品を選ぶ時に重視するポイント(使いやすさ・値段・成分等)なども設計項目として書き出す方が良いかもしれません。実在の人物のプロフィールを設定していくような気持ちで項目を書き出していきましょう。

ペルソナを設計する

ペルソナの設計項目を全て書き出すことができれば、実際にペルソナを設計していくことになります。しかし、ここで重要なのが突飛な設定にしすぎないことです。ペルソナを設計する時に自社に都合の良い存在を生み出してしまうと、実際に商品やサービスを売り出しても購入者として該当する人がいないという失敗をしてしまう恐れがあります。そのため、現実のデータを元にペルソナを設計していきましょう。

今までに実施したWebアンケートや街頭インタビューなど、既に得ている既存顧客の情報からペルソナを設計していくのがスタンダードな方法です。もちろん、その他にもECサイトを持っている企業の場合はECサイトの登録情報や購入状況、アクセス状況などを参考にするのも良いでしょう。また、場合によっては競合他社が公開している調査結果を元にペルソナを設計するケースも少なくはありません。そうすることにより、他社を好むペルソナをターゲットとして自社の顧客に囲い込むことが可能になる場合もあります。

PDCAサイクルに当てはめる

ペルソナを設計して、そのペルソナを満足させることができるような商品やサービスを販売すると、しばらく時間が経てば成果が見えてくるでしょう。その場合は、必ずPDCAサイクルに当てはめてペルソナマーケティング全体の見直しをしなければなりません。たとえばしっかり売上額が確保できていても実際に設計したペルソナとは違うユーザー層が購入してしまっている可能性もあります。それでは、企業としては成功していても、ペルソナマーケティングとしては失敗に終わっていると言わざるを得ません。早急にペルソナを設計し直して、本来のターゲット層に対する再アプローチが必要となるでしょう。

また仮にペルソナマーケティングが成功していても定期的にペルソナを見直していかなければなりません。知らない間にペルソナと実際の顧客が乖離してしまわないように、定期的に見直して乖離が生じていないか、生じている場合はどうすれば良いのかをチェックしていく癖をつけましょう。

企業が活用しているペルソナの実例3選

設計する際に細かな設計項目が必要になったり、実際の調査結果から精密なペルソナを設計する必要があるなど、ペルソナマーケティングは非常にコストがかかるマーケティング手法です。しかしながら、実際にペルソナマーケティングを活用して大きな利益を生み出している企業も少なくはありません。そこで、ここでは企業が実際に活用しているペルソナの実例を3つ紹介していきます。

日立アプライアンス株式会社

ペルソナマーケティングの成功事例として最も知名度が高いのは、日立グループの中でも業務用エアコンを専門的に販売している企業である日立アプライアンス株式会社の事例です。
ペルソナマーケティングが難しいと言われているB2Bの企業の成功事例として広く知られていて、実際にペルソナ設計の見直しによって市場シェアを9.8%から11.1%まで引き上げたと言われています。

通常、家庭用のエアコンであればデザインや機能などで差別化して顧客から選ばれることも可能です。しかしながら、日立アプライアンスが取り扱っている業務用エアコンの場合は、会社への設置にエンドユーザーである企業の従業員の好みや意見が反映されることはほぼありません。実際、業務用エアコンが設置されるまでの流れとしては「日立アプライアンス→卸会社→取り付けを行う設備店→企業の従業員」という流れになっていて、日立アプライアンスが従業員のペルソナを設計することは現実的ではありませんでした。

そこで、日立アプライアンスは設備店の店長である「旭立信彦」という人物をペルソナとして設計したのです。ペルソナの設計項目を埋めるために設備店1,800社以上に実際にアンケートとインタビューを実施し、どのようなエアコンが好まれるのか、どのようなエアコンであれば設備店の課題を解決できるかを明確化したのです。

その結果として、日立アプライアンスの製造する業務用エアコンは、設備店の取り付けコストを大幅に削減するとして高い評価を得られるようになりました。そして設備店の営業自体も本来のエンドユーザーである企業に対して日立アプライアンスのエアコンを勧める機会も増え、市場シェアの向上に成功したと言われています。

Soup Stock Tokyo

現在は都心を中心に広く食べるスープの専門店として出店しているSoup Stock Tokyoですが、実は三菱商事初の社内ベンチャーとして社内でも異色の存在として知られていました。このSoup Stock Tokyoは、「秋野つゆ」という都心で働く37歳のキャリアウーマンをペルソナとして設計することにより、創業10年目には売上高42億円に到達するという偉業を達成したことでも知られています。

Soup Stock Tokyoが設計したペルソナである秋野つゆは、経済的に余裕があり値段より機能性を重視する性格を持つキャリアウーマンでした。「そうした生活を送る秋野を満足させるような食事はなにか」という視点で商品を開発することにより、多額の売上を生み出すことに成功したのです。秋野の性格や収入、働く環境などを分析すると「駅周辺や構内に出店することで通いやすくなる」、「少し値段が高めであっても栄養価や満足度が高ければ躊躇なく購入する」、「機能性を重視するため商品の質が大切」など商品設計において重要視される要素が自ずと見えてくるでしょう。その結果、レギュラー価格が630円とスープとしては高めでありながら多くの人に選ばれる商品を開発することに成功したのです。

このように、「秋野つゆ」という一人のペルソナの需要を満たし満足させることができる商品を考えることで、秋野つゆと同じ考え方を持つ多くの人から選ばれる存在になることができます。すなわち、ペルソナマーケティングの本質とは、このSoup Stock Tokyoの事例が示しているように「多くの人を同時に満足させることにこだわらず、一人の人を満足されることで共通項を持つ人たちにも波及していく」ということにあるのです。

HubSpot社

先ほどB2Bの企業におけるペルソナマーケティングの成功例として日立アプライアンスの事例を紹介しましたが、現実的にはペルソナマーケティングはB2Cの企業の方が顧客像がはっきりしていてイメージしやすいと考える人の方が多いのではないでしょうか。そこで、ここではB2Bの企業におけるペルソナマーケティングについてさらに詳しく説明するために、もう一つのB2Bの事例としてHubSpot社の事例も紹介していきます。

HubSpot社はインバウンドマーケティングのツールを提供しているアメリカの企業です。このHubSpot社は複数のペルソナを設計してペルソナマーケティングに成功していることでも知られていますが、代表的なペルソナとしては「マーケティング担当のマリー」という女性が有名でしょう。

このマーケティング担当のマリーは、プロのマーケターで役職を持っている女性です。企業規模としては25人~500人の従業員を抱える中規模企業に勤務していて、社内では1人~5人で構成させる小規模のマーケティングチームに所属しています。学歴は商学部を卒業していますが起業家教育でも有名なバブソン大学のMBAも取得しています。家族構成としてはマリー自身は42歳で6歳と10歳になる子どもも2人います。そんなマリーの仕事は営業担当者に対して販促品や見込み顧客を引き継いでサポートを行うことや、会社内部のコミュニケーション効率を向上させたり、社外に対してブランドの認知度を向上させることにあります。しかしながら、その全ての仕事においてはタスクが多いため目標までの道のりが不明瞭なことが多く、その課題を解決しなければなりません。

そこで、「マーケティング担当のマリー」はHubSpot社のサービスを活用しています。その理由としては、「仕事を含めて自分自身の生活をシンプルにブラッシュアップしてくれる」、「インバウンドマーケティングに関する最適な戦略を汲むことに適している」、「営業担当者やCEOに対して簡単にレポートを作成して送ることが可能」という主な3つの理由があります。すなわち、HubSpot社はマーケティング担当のマリーを常に満足させるサービスを打ち出すことで、マーケティング担当のマリーと共通する項目を持つマーケティング担当者から選ばれる企業となることが可能です。さらに、マリーが抱えているであろう不安を解消するための施策を考えたり、あるいは「さらにマリーのHubSpot社に対する満足度を高めるためにはどうすれば良いか」という視点で考えることによって、戦略的に顧客満足度を高めていくことができるでしょう。

単に「どうすればもっと顧客を満足させることができるのか」を考えるよりも、具体的なペルソナを想定して「Aという使い方をしている顧客を満足させるためにはどうすれば良いか」、「Bの目的のために使っている顧客の不満を解消するためにはどうすれば良いか」という視点を持つことによって、具体的な改善案も出やすくなると言われています。これはB2Cの企業であってもB2Bの企業であっても共通している点ですので、ペルソナマーケティングを行う際の前提として覚えておくと良いでしょう。

ペルソナを設計する上での注意点

ペルソナマーケティングでは当然ながらペルソナの設計が重要となってきます。すなわち、そのペルソナを設計する上で誤った設計をしてしまうとペルソナマーケティング自体が破綻してしまう恐れがあります。では、ペルソナを設計する上ではどのような点に注意すれば良いのでしょうか。絶対に覚えておきたい3つのポイントを紹介していきます。

現実から乖離したペルソナにしないこと

ペルソナの設計で最も大切なのが、現実から乖離したペルソナにしないという点です。もちろん、誰もが「絶対的に当社のファンで当社の商品なら必ずチェックする」といった明らかに都合の良いペルソナを設計することはないでしょう。しかしながら、過去の購入層のデータを元に緻密に作成したつもりのペルソナでも、いつの間にか現実から乖離してしまうこともあるので注意しなければなりません。

たとえば、過去のアンケート結果を見ると購入層としては30代の女性が最も多く、年収帯としては年収1,000万円以上の顧客が最も多い企業があるとします。そうした企業がペルソナを設計する時、アンケート結果をそのまま利用すると「年収1,000万円を超えている30代の女性」となります。もちろん、こうした女性がいないわけではありませんが、圧倒的に少数派であると言わざるを得ません。

このようにアンケートの結果を見ると「自分は40代の男性だが、プレゼント相手が30代の女性なので30代女性として回答している」や「自分自身の年収は400万円だが、世帯年収が1,000万円なので1,000万円と回答している」という人もいるため、現実から乖離してしまう恐れがあります。もちろん、単に「アンケートに正確に答えることに抵抗がある」あるいは「アンケートの回答が誤ってしまったが修正が面倒、もしくは気付いていない」という人もいるでしょう。アンケート結果だけを元にペルソナ設計をすると、こうした落とし穴にはまってしまう恐れがあります。そのため、仮にデータを元にペルソナを設計した場合でも必ずチェックしなければならないのです。

ペルソナの項目に理由をつけること

時には、アンケート結果だけではなく顧客を想定しながらペルソナ設計をすることもあるでしょう。その場合は想像して設定を決めることも多いため矛盾に注意しなければなりません。たとえば「華美なものに抵抗感があり、キラキラしたものは選択肢にすら存在しない」という人の頻繁に使うSNSがInstagramだと矛盾が発生してしまうでしょう。他にも「平均年収以上を持っていて値段よりも機能性を重視する」人の休日の過ごし方が「100円ショップ巡り」などだと人物設定に矛盾が生じてしまいます。

このような矛盾は現実の人間は実際に持っていることも少なくはありませんが、ペルソナ設計の上では明らかに不自然な要素となってしまいかねません。こうした矛盾が発生することを防ぐためには「なぜ〇〇を好むのか」を考えながらペルソナ設計をしていくことが非常に重要です。一つずつ理由を考えながら項目を埋めていくようにしましょう。

「購買に至らなかったペルソナ」も有効

ペルソナマーケティングでは、基本的に「特定のペルソナを満足させるための商品やサービスを生み出す」ことを目的としています。しかし、実はそのような顧客となってくれるペルソナだけではなく、「購買に至らなかった」というペルソナも重要な存在になります。「なぜ購入に至らなかったのか」を考えることで、商品やサービスのベクトルを変えれば良いのか、あるいは価格設定を買えればさらに多くの人に受け入れられるのかといった視点を持つことができるでしょう。設計したペルソナを満足させるだけでは、一定数の顧客しか増やすことができません。些細な理由で取りこぼしてしまった顧客を囲い込み、市場シェアを拡大させるためにも購買に至らなかったペルソナも設計しながらペルソナマーケティングを活用していきましょう。

ペルソナの実例を参考にペルソナマーケティングに挑戦してみよう

ペルソナマーケティングは、ある意味でハイリスクハイリターンのマーケティング戦略だということができます。しかしながら、しっかり現実に即したペルソナを設計することができれば、今までよりも効率的に打ち合わせ段階から発売、プロモーションへと進めていくことができるでしょう。ペルソナを設計する時は過去のデータはもちろん、紹介したような成功事例も参考しながら設計していくことが重要となります。

また、ペルソナマーケティングはインフルエンサーマーケティングとの相性が非常に良いマーケティング戦略としても知られています。しっかり設計したペルソナをフォロワーに持つインフルエンサーを起用することができれば、かなり効率的にプロモーション活動ができるでしょう。もし設計したペルソナをフォロワーとして抱えているインフルエンサーを探しているのであれば、ぜひトリドリマーケティングにご相談ください。契約している多数のインフルエンサーの中から最適なインフルエンサーを紹介させていただきます。