「ニーズ」「シーズ」の違いと現代に必要とされるマーケティング発想

変化する「ニーズ」「シーズ」発想と求められる発想及びマーケティング手法

商品を開発する際、考えなければならないのが、「ニーズ」発想を用いるか「シーズ」発想を採用するかです。どちらを選択するかにより、マーケティング手法も変わってきますし、宣材に記載する文言やSNS媒体に添えるキャッチフレーズ等も変える必要があります。商品開発や、マーケティングの現場では、度々このような「ニーズ」「シーズ」論争が巻き起こっているのです。どちらが優れた発想なのか、また自社に適している方法はどちらなのかなど、積極的に議論されています。

「ニーズ」及び「シーズ」には、それぞれにメリットがあり、あらゆる要素により適している場合と、そうではない状況が存在します。企業の現状だけではなく、時代背景やジャンル、コンテンツなど多くの要素を加味し、選択していかなければなりません。より適切な方法を選択するためには、現状把握以上に、「ニーズ」「シーズ」の意味やメリット等を正しく理解しておく必要があるでしょう。優れた部分だけではなく、発生するデメリットや過去の事例も学んでおく必要があります。今回は、「ニーズ」及び「シーズ」発想の正しい意味と、どちらを選択するべきか、選び方やポイントについてご紹介していきましょう。合わせて、「ニーズ」「シーズ」発想の活用術と今後の傾向予想についても、解説していきます。正しい意味や現在の様子、未来の状況を想定しながら、読み込み、そして手法を身に着けていきましょう。

「ニーズ」の特徴及びメリット・デメリット

「シーズ」と比較検討されることの多い発想である、「ニーズ」は、マス広告の衰退と共に一層注目されるようになった発想、開発起点です。つまり、これからのマーケティングでは優勢とされ、積極的に用いられるべきと考えられています。まずはここから、「ニーズ」の意味と、具体的なプロセスについて、ご紹介していきましょう。今後のマーケティング起点として必要とされている発想ではあるものの、メリットばかりを有しているわけではありません。ここでは、メリットの他デメリットについても、詳しく解説していきましょう。

ニーズ(needs)とは

ニーズ発想やシーズ発想とは、商品・サービスを開発する際の、起点に関する発想を表しています。どういった事柄に注目し、開発を始めるのか表す言葉なのです。ニーズ発想とは、商品・サービスを使用する側である、消費者目線に立った発想の事であり、それらを起点とした開発作業等を意味しています。市場や消費者間に既に存在する欲求に注目し、それらを適切に満たすための商品・サービスを開発していく方法です。

消費者の目線に立ち、欲求を満たす商品を作り、提供していくため、ある程度の需要を見込むことができます。しかし、明確に存在している消費者の欲求をくみ取り開発に繋げるため、既に多くの関連商品が出回っていることも少なくありません。また、大きな市場に注目する場合、成熟しきっている可能性もあり、マーケティングにはより一層の工夫が必要となるでしょう。類似商品との差別化、個性のアピール方法など、ニーズ発想には必要とされる要素やポイントも多数存在します。

ニーズ事例

 

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ニーズ発想による商品・サービスには、どのようなものが存在するか、いくつか事例をご紹介していきます。代表的なニーズ発想と言えるのは、美容室です。現在日本には、コンビニエンスストア以上の美容室が存在しています。「髪を切る」「整える」という日常的に発生する消費者のニーズを満たす、サービス事例です。

しかし、美容室はあまりに増えすぎたため、消費者が日常的に抱えている根本的な欲求である「髪を切りたい」「髪を整えたい」だけではなく、別の欲求にも注目し、取り入れるようになりました。例えば、「充実した時間を過ごしたい」「美しくなりたい」といった欲求です。消費者のこのような欲求に注目したため、技術だけではなく内装や空間づくりにも注力するようになりました。また美容室は、顧客の欲求を引き出す手法も用いています。インフルエンサーやモデルを起用し、スタイリングを行う方法です。スタイリング後の様子を見た消費者は、「この人のように美しくなりたい」という欲求を感じ、美容室に足を運びます。消費者が抱える明確な欲求を満たすだけではなく、見えにくい欲求を引き出す手法も用いられている事例です。

日用品の開発・販売も、ニーズ発想が起点だと言えるでしょう。消費者が日常的に使用するものを探し、開発・販売を行います。それだけではなく、「このような苦労がある」「こういった商品があれば便利」といった、商品としてまだ具体的に形作られていない欲求にも、注目しているのです。水回りを簡単に衛生的に保ちたいという欲求から、水切りワイパーが開発されたり、家事による手荒れを防ぐため、お洒落で使い勝手のいいロング手袋が開発されたのも、具体的ではない欲求に注目した結果です。

特徴

ニーズ発想で用いる消費者のニーズは、2種類存在します。顕在ニーズと、潜在ニーズです。顕在ニーズとは、消費者自身が既に自覚しているニーズを意味しています。前項の事例に当てはめるのであれば、「髪を切りたい・整えたい」といったニーズです。潜在ニーズは、消費者自身も認識できていないニーズを意味しています。水切りワイパーや、ロング手袋が該当すると言えるでしょう。ニーズ発想を活用する際は、どちらか一方のニーズを満たすことも必要ですが、過程に応じ両方を満たさなければならない場合もあります。なぜなら、顕在ニーズばかりを満たしていても、購買行動を促すことが難しくなるからです。

顕在ニーズは、消費者が明確に自覚している欲求のため、収集しやすいという特徴を持っています。「何が欲しいですか」と尋ねるだけで、具体的な商品・サービスを消費者自ら提示してくれるのです。そのため、開発・販売しやすく、取り入れやすいと言えます。しかし、集めやすい情報、満たしやすい状況により、すぐに市場は成熟してしまうのです。類似商品が溢れかえり、得られる利益は分散してしまいます。前項の美容室も、このような状態だったと言えるでしょう。

成熟した市場で活動し、望んだ利益を得るためには、顕在ニーズだけではなく、潜在ニーズも満たす必要があります。ところが、顕在ニーズとは違い「何が欲しいですか」と尋ねても、消費者は明確な答えを返してくれません。なぜなら、本人たちもまた自覚していない欲求だからです。ニーズ発想では、2種類のニーズが存在し、それらを満たす必要性を理解しておきましょう。そして、顕在ニーズと潜在ニーズの特徴も、それぞれ理解しておく必要があります。

メリット

ニーズ発想による開発及び販売のメリットは、ある程度の収益が見込めるという部分です。既に存在する市場、消費者のニーズを元に開発を始めるため、真新しい事例が少なく、計画・想定が容易く行えるというメリットが存在します。仮に、全く新しい市場、不特定要素の多い事柄を相手としたマーケティングを実施する場合、参考とする数値や事例も少ないため、計画が立てずらく、さらに激しく乖離する恐れもあるのです。想定外の事例が多発した場合、望んでいた利益を得られないばかりか、大きなデメリットだけを受け取ってしまう可能性さえあります。計画の立てやすさ、ある程度の収益確保は、大きなメリットだと言えるでしょう。

またニーズ発想では、リピート率やLTV(Life Time Value)の高額化も期待できます。明確に必要とされる商品・サービスを提供するため、リピートの可能性が高くなることは、言うまでもありません。リピート率が上昇することにより、比例してLTVも上昇するため、企業にとっては大きなメリットでしょう。前項でもご紹介した開発・販売のしやすさも、メリットであると評価することができます。顕在ニーズは非常に収集しやすく、SNS媒体を活用したり、インフルエンサーを起用することにより、これまで以上に短時間で多くのニーズを集めることが可能です。集めたニーズを商品に反映させることにより、消費者との間に信頼関係、愛着も形成でき、ロイヤリティの高い顧客育成にも繋がるでしょう。

デメリット

ニーズ発想のデメリットは、真新しさがなく大きな見返りが期待できないという部分です。ニーズ発想は、消費者の欲求に注目した開発工程を経るため、既に多くの商品・サービスが誕生しています。そのため、商品やサービスそのものに真新しさが感じられないため、購買行動を促しにくいのです。ニーズ発想による商品・サービスを販売する際は、類似商品との違いを明確にしたり、発信する情報を工夫する必要があります。商品そのものではなく、売りぬくマーケティング手法が問われるのです。

また、ニーズ発想には、潜在ニーズという種類が存在し、顕在ニーズと共に満たしていかなければなりません。しかし顕在ニーズとは違い、潜在ニーズは見つけにくいという特徴を持っているのです。消費者が持っている欲求ではあるものの、消費者自身はそれらを明確に認識していません。そのため、何度もヒヤリング、コミュニケーションをとり、欲求を形作る作業が必要となります。SNS媒体の誕生により、顕在ニーズには劣るものの、潜在ニーズの調査・収集等は非常に容易になりました。顕在ニーズ同様、インフルエンサーを活用することにより、さらに短期間で調査・分析することが可能です。

ニーズ発想には、市場の成熟化による利益の分散購買行動を促す難しさなど、多くの課題が残されています。しかしSNS媒体やインフルエンサーなど、新しく誕生した技術やツールを活用することにより、デメリットを減少させたり、解消することも可能なのです。マーケティングを実施する際は、デメリットに怯え囚われるのではなく、改善策がないか柔軟な思考を持って挑んでいきましょう。

「シーズ」の特徴及びメリット・デメリット

ニーズ発想の対極として利用されることの多い「シーズ」発想。マス広告が主流となった1970年代からしばらくの間、優位的な発想として活用されてきました。シーズ発想を用いれば、多くの商品・サービスが求められるようになり、そのような状況に合わせ、さらに多くの商品・サービスを供給し続けることが良しとされていたのです。ここでは、シーズ発想の意味や特徴から、優れた発想だと評価された時代背景についても、詳しく解説していきましょう。また、シーズ発想を用いた具体例、メリット及びデメリットについても、ご紹介していきます。

シーズ(seeds)とは

シーズとは、企業が所有している多くの種(seeds)を元に、開発・販売を行っていく発想を意味しています。企業が所有している種とは、開発技術であったり、販売ノウハウ、特定の事柄に関する知識などです。消費者の欲求をヒントに、商品を作り出すニーズとは違い、企業内の情報を起点に、開発作業や調査を行います。

そのため、質の高いまたは技術力のある優れた商品・サービスが作られることも珍しくありません。消費者や市場の予想をはるかに超える商品やサービスにより、新しい習慣や文化が形成されていく場合もあるのです。しかし、企業側の起点により作られた商品・サービスが、必ずしも市場に評価されるとは限りません。販売したものが消費者に受け入れられないことも、少なからず発生するのです。つまり、シーズ発想により作られた商品・サービスは、ハイリスク・ハイリターンだと評価することができます。高く評価され、文化や新しい生活様式を形成することもあれば、全く理解されず大きな損だけを作り上げることもあるのです。

またシーズ発想は、企業の「押し付け」マーケティングだという評価も見られます。企業が作成したいものを作成し、それらを一方的に消費者に押し付けているといった意見です。一方的な情報発信ツールとして知られるマス広告と相性が良く、同時期に積極的に活用されていたこともあり、このような批判的な評価も珍しいものではありません。しかし、シーズ発想も、マス広告も、全く消費者の意見を取り入れていないわけではないのです。起点となる発想は企業側にあるものの、その後市場調査や消費者調査を行い、販売計画を立てていきます。企業がどれほど優れていると感じても、時代や市場に適さない、または販売に関してリスクが大きすぎると判断した場合は、消費者に提供されることはないのです。

シーズ事例


シーズ発想による開発・販売事例について、いくつかご紹介します。1つ目は、青汁王子でも知られる、「すっきりフルーツ青汁」です。当時青汁という商品は、健康意識の高まった高齢者層がターゲットとなっていました。身体のメンテナンス、維持に注力する高齢者への、補助食品や薬といった意味合いで愛飲されていた商品です。補助食品や薬といった意味合いが強かったため、美味しさまで求める人はいませんでした。飲みやすさを謳う商品はチラホラ見られたものの、「青汁にしては」という程度で、「美味しい」と絶賛され好んで飲まれる商品は、なかったと言えます。

しかし、青汁王子こと三崎優太さんは、ジュースのような感覚で飲める青汁を作成し、市場に発信しました。美味しさを求めていなかった市場に激震が走り、大きな話題となります。さらに、長らく定着していた高齢者層というターゲット層までも、覆して見せたのです。商品パッケージに愛らしさを取り入れ、カラフルなものを作成しました。さらに、健康をアピールするのではなく、ダイエットや美肌など、美容要素を前面にアピールしたのです。その結果、青汁とはかけ離れた存在だった若年層、女性層を取り込むことに成功します。最終的に、すっきりフルーツ青汁は、1.5億包販売され、前年比539%の増収を達成しました。

2つ目は、高級ファッションブランドLOUIS VUITTONが、防護服生産を開始した事例です。世界中に求められる有名アパレルブランドLOUIS VUITTONに、防護服製作を求めている人などいませんでした。ところが、LOUIS VUITTONは、自社の技術を用いて、新型コロナウイルスの拡大による医療用品の枯渇した状況を打破したいと考えたのです。既に所有していた縫製技術、工場やツールを活用し、防護服だけではなくマスクの生産も始めました。消費者が求めているものではなく、自社の所有する技術がどのように活用できるか考え、強みを活かしていくことこそ、シード発想の醍醐味だと言えます。

3つ目の事例は、ペヤング焼きそばシリーズです。ペヤング焼きそばは、主力商品であるソース焼きそば以外にも、多くの商品を開発・販売しています。主力商品であるソース焼きそば以上に、変わり種商品が注目を浴びることも少なくありません。消費者が持つ「簡単に食べたい」という欲求だけに注目するのであれば、変わり種商品を作り続ける必要はないでしょう。焼きそばを作る技術を活用し、楽しさや面白さを提供するため、変わり種商品を定期的に販売しているのです。「簡単に食べたい」というニーズから、自社技術を用いて「面白さ」「楽しさ」を生み出すというシーズまで、どちらも満たしている企業だと言えるでしょう。

特徴

シーズ発想は、企業が既に所有している技術等を起点に、展開する商品・サービスを開発していきます。「プロダクトアウト」と置き換えられることもあり、「マーケットイン」と対立する概念として使用されることもあるでしょう。「ニーズ」「シーズ」論争と同じく、「プロダクトアウト」「マーケットイン」も、度々どちらが優れているのか議論されています。近年では、ニーズ発想と共にマーケットインが高く評価される傾向が強く、「商品企画は、マーケットインで考えなければならない」といった文言を見聞きしたことのある人も多いことでしょう。

前項でも解説したように、シーズ発想は独裁的な製作及びマーケティングではありません。企業が持っている強みを理解し、社会や市場、消費者の状況とすり合わせていく手法です。消費者を蔑ろにする手法ではありませんし、企業としての強み、所有している能力や技術を把握していることは、非常に重要な事だと言えるでしょう。

メリット

シーズ発想のメリットは、特徴でもある、企業が既に持っている技術や強みを活かせる部分です。ニーズ発想が起点の場合、消費者の欲求を満たす商品・サービスを作成しなくてはなりません。その中には、自社で所有する技術やツールを活用できるものもあれば、当然全く使用できない場合もあるのです。ニーズ発想による開発では、企業として築いたもの、所有している強みに関係なく、消費者の欲求を優先的に満たさなければなりません。そのため、ニーズ発想は類似商品が多く、差別化が難しいのです。シーズ発想では、企業としての特徴を活かしたり、独自の技術からオリジナリティ溢れる商品・サービスを開発することができます。他社との差別化が明確にできるため、購買行動を促したり、集客や知名度向上にも役立てることができるでしょう。

また、シーズ発想による開発では、文化を作ることも可能です。青汁の例をはじめ、これまで当たり前とされてきた一般的な状況を大きく覆すことも、新しい市場を作り出すこともできます。さらに、新しい市場、未開拓の市場は、大きな見返りが期待できるでしょう。参入企業が少ないことから、利益の分散が発生せず、ハイリターンも期待できます。仮に新しい市場を開拓した場合、第一人者として長く特別な地位を築くことも可能です。第一人者としての訴求力や説得力、特別感や信頼感など、後々に参加してくる企業が得られない多くのメリットを得ることができます。

デメリット

シーズ発想のデメリットは、独創的過ぎる商品に、市場や消費者が付いてこれないといった部分です。優れた商品、魅力的なサービスが必ずしもすぐに受け入れられ、求められるとは限りません。社会情勢や生活スタイル、経済の動きなど、様々な要素により求められることもあれば、拒絶されることもあるのです。1度、世間に商品として情報を発信してしまった場合、それらは自社の独占市場ではなくなってしまいます。つまり、販売のタイミングが難しく、非常に重要になるということです。

また、シーズ発想の誤認によるデメリットも、注意しなければなりません。マーケターであっても、シーズ発想を正しく理解していない人も、少なからず存在します。シーズ発想は、起点が企業側に存在するだけであり、その後の市場調査や消費者調査は、ニーズ発想と大きく違いがありません。しかし、これらを理解せず、企業としての個性のみを軸に、商品開発及びマーケティングを実施する企業、事業者も存在するのです。市場調査や消費者調査を怠った場合、戦略不足となってしまいますし、なにより市場そのものが存在しなかったという事態も発生しかねません。

いくら自社技術、ツールを応用しているからと言っても、開発や販売コストがゼロであるはずがなく、利益を出すことも難しくなってしまいます。さらに、個性的な商品・サービスは、インパクトがあるものの、顧客となり得る分母数は圧倒的に少なくなってしまうでしょう。分母を限りなく減らしてしまうのは、大きなデメリットだと言えます。このようなデメリットを解消するためにも、まずはシーズやニーズなど、マーケティングに関連する用語の意味を正しく理解しておくことが重要です。どのような状況下であっても、市場調査を怠っていい理由など、マーケティングには存在しません。新しいツールや手法に注目するだけではなく、基本部分を怠らないように注意していきましょう。

「ニーズ」「シーズ」どちらが優れているのか

ここまで、ニーズ及びシーズの特徴やメリットについて、解説してきました。現代、評価されることの多いニーズ発想であっても、デメリットが存在すること、また批判されることの多いシーズ発想であっても、強みやメリットが存在することなどが理解できたでしょう。それでは実際に、2020年以降のマーケティングでは、どちらを使用するべきなのでしょうか。これまでの様子や現状の様子をもとに、今後どちらを使用していくべきなのか、詳しく解説していきましょう。

マーケティング1.0からその先へ

2020年以降は、高度経済成長期や前後数十年のように、大量に作成し大量に消費する時代ではありません。物やサービスを所有し、消費し続けることが幸せのステータスとされた時代とは違い、それぞれに適したものを適した量所有することが良しとされています。また、所有せずシンプルに、効率的に生きることもまた、注目されているのです。高度経済成長期や、その前後数十年に発生した大量生産及び大量消費を、マーケティング1.0と呼びます。マーケティング1.0であれば、企業本位な生産・販売であっても、ある程度の利益を見込むことができたでしょう。しかし2020年は、マーケティング1.0時代ではありません。

顧客の思考を尊重し、各個性に合わせる時代と言われ、マーケティング2.0と呼ばれています。つまり、消費者の意向をくみ取り、商品に反映させやすいニーズ発想が適していると言えるのです。このような状況から、2020年以降はニーズ発想を積極的に実施していくべきだと結論付けるのは、少々早すぎるでしょう。2020年以降は、マーケティング3.0に突入すると予想されているのです。マーケティング3.0とは、感性を尊重するマーケティング手法です。顧客や市場の感性であったり、企業や事業者が持つ感性も含まれます。多くを満たす大規模なマーケティングから、より小規模に細分化したマーケティング時代が訪れると予想されているのです。

スティーブ・ジョブズの否定

現代の様子、今後の予想を参考にした場合、ニーズ発想がやや有利だと言えるでしょう。これまで以上に個人に注目した商品開発が求められるようになるため、消費者の小さな欲求にさらに敏感になる必要があるのです。しかし、ニーズ発想が有益ではないという、明確な対抗意思も存在します。一般的な企業人、マーケターの意思であれば、それ程大きな影響力もなく参考するに値しない事柄ではありますが、対抗意思を発信したのは最も有名な開発者でありマーケターでもあるスティーブ・ジョブズです。

スティーブ・ジョブズは生前、「多くの場合、人は形にして見せてもらうまでは、自分は何がほしいのかわからないものだ」と発信していました。さらに、「ベル(グラハム・ベル)が電話を作った時、市場調査をしたと思うかい?」という言葉も残しています。開発者やマーケターのクリエイティブさを尊重し、消費者や市場に囚われ過ぎることへの警告とも受け取れるでしょう。さらに、「消費者に何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない」という言葉も残しています。この後には、「完成する頃には、彼らは新しい物を欲しがるだろう」という名言も残されていました。

つまり、消費者の欲求を確認し、市場の様子を調査しているうちに、消費者の様子も市場の状況も、大きく変化するという事です。そして、企業や商品・サービスを扱う事業者は、後手にまわってはいけないということを発信しています。市場や消費者の欲求をくみ取り、形にしていくことが企業の役割ではなく、新しい形、生活様式などを提案し、豊かにしていくことが企業の在り方だと強く訴えかけているのです。

ビル・ゲイツの意思

自身をプログラマと評価する、マイクロソフト創業者の1人、ビル・ゲイツも、企業や開発者が持つアイディアを尊重する発言を残しています。「自分が出したアイディアを、少なくとも1回は人に笑われるようでなければ独創的な発想をしているとは言えない」という言葉を残しているのです。また、「会社の価値観や推奨のシステムもこの考えを反映すべきである」といった強いメッセージも残しています。また、「全ての机と、全ての家庭にコンピューターを」という言葉は、あまりにも有名な明言でしょう。

消費者が何を求めているかではなく、自分たち企業が何を提供できるか、何を提供したいと考えているのかが重要だと発信しているのです。しかし、全く異なる意味に受け取れる発言も残しています。「ウィンドウズにどのような機能が付いているべきかを決めるのはウィンドウズを買ってくれる消費者だ」という発言です。また、「我が社がこれほど成功しているのは、人に好まれるものをなんでも取り入れ発展させるというアプローチのおかげだ」という言葉も残しています。つまり、ニーズ発想もシーズ発想も重要であり、どちらか一方に固執することが無意味であることを表しているのです。時には持っている技術や知識を活用し新しいものを提案し、時には消費者と共に新しい文化を作り上げていくべきだと発信しています。

決定回避の法則

世界的にも有名な2人の開発者の言葉から、ニーズ発想やシーズ発想に拘り、どちらか一方を選択することの愚かさが理解できました。では続いて、消費者に発生する心理状態から、どちらが優れた発想か考えていきましょう。現代の消費者は、より自身に適した商品を探していると評価されています。大勢が選択するものを、積極的に選ばないとされているのです。果たして、本当にそうなのでしょうか。人間は、成功報酬を受け取るよりも、失敗を回避したいという欲求が強く働くようになっています。人より抜きんでた報酬ではなく、失敗せず細々とでも現状維持することを強く望むのです。つまり、少数派の商品やメジャーではない商品が好まれるという評価に、疑問が残ります。

また、消費者には決定回避の法則が頻発しています。決定回避の法則とは、選択肢が多くなりすぎると選択することが困難になり、それらを避けようとする心理です。その証拠に、自分の代わりに判断を下してくれるインフルエンサーの影響力が増しています。消費者の欲求に合わせ、それらを適切に満たす商品を膨大に生み出すことは、消費者にストレスを与える行為であり、選択に困った消費者は増えすぎた選択肢を減らしてくれる存在を求めているのです。

ニーズ発想が消費者の求めている状況であり、企業に大きな利益をもたらすとは、断言できないでしょう。もし、ニーズ発想によるマーケティングを実施するのであれば、消費者が求める選択肢を適切に絞り込んでくれる存在であるインフルエンサーを起用してみてください。選択することにストレスを感じると、消費者の多くは当たり障りのない一般的な商品を選択してしまいます。失敗するリスクが最も低く、多くを考えこむ必要がないからです。それでは、ニーズ発想により消費者1人1人に適した商品を開発するメリットがありません。選択肢を提示し、消費者に購買行動を促すためにも、インフルエンサーの起用を考えてみましょう。

ウォンツ(wants)

ニーズやシーズといった発想に関連する、ウォンツという着眼点も、重要とされています。ウォンツとは、特定の商品・サービスを欲する、消費者の欲求の事です。特に、ニーズと深い関係を持っている事柄として、注目されています。ニーズが、商品化されていない消費者の欲求であることに対し、ウォンツは、具体的な商品を表しています。のどが渇いたというニーズから、水が飲みたいというウォンツを導き出すことが可能です。ニーズの中には、無自覚な欲求が存在しますが、ウォンツは常に自覚された欲求となっています。

また、ウォンツだけが分かっている状態から、ニーズを読み解き、シーズと関連づかせることも可能です。「水が飲みたい」というウォンツを知り、「自社では優れた水を作成できる工場・土地を保有している」というシーズに結びつけることもできます。つまりこれからの開発作業やマーケティングでは、ニーズやシーズ発想だけではなく、ウォンツへの注力はもちろん、多くの情報を柔軟に組み合わせていく必要があるのです。

さらに、ウォンツには新しい欲求の形も誕生しています。それは、特定の人物が発信している商品が欲しいという欲求です。消費者は、優れた商品を探しているのではなく、誰が発信しているかによって、購買行動を感じます。このようなウォンツを満たすためには、商品を開発する際の起点やそのもの質ではなく、情報発信者の工夫などマーケティング手法も重要となるのです。

デマンド

マーケティングにおいて、デマンドも無視できない重要な事柄です。デマンドとは、消費者の需要を意味し、購買意欲と支払い能力の関係性を表しています。いくら購買意欲を持っても、現実的に購入できる金額でなければ、購買行動は起こりません。さらに、現実的に購入できる金額であっても、その金額を支払ってまでも手に入れたいと思えなければ、購買行動が発生することはないのです。デマンドに注目しても、情報発信の重要性がわかります。商品や金額を紹介する際、また誰がどのように発信するかによって、消費者の捉え方は大きく変化します。優れた商品が数多く出回っている2020年以降は、商品やサービスの質以上に、どのような発信を行うか、また情報を受け取った消費者がどのように捉えるかなどを、慎重に見極めていく必要があるでしょう。

起点となる「ニーズ」「シーズ」に囚われるのではなく売りぬくためのマーケティング手法にも注目していこう

これからの時代、商品やサービスで個性を発揮するのではなく、マーケティングによってどのような売り方をしていくかが重要となります。インフルエンサーが誕生した直後以上に、インフルエンサーの質が問われ、起用する企業の能力が試されるのです。より質の高いインフルエンサーを起用するためにも、マッチングプラットフォームである「トリドリマーケティング」を活用してみましょう。10,000人以上在籍するインフルエンサーの中から、優れたインフルエンサーを起用することができます。適切な人材を起用し、自社の優れた商品を、多くの消費者に届けていきましょう。