マーケティングにおけるポジショニングの重要性とマッピング事例7選

マーケティングポジショニングはマップを作って検討しよう

マーケティング戦略を成功に導くためには、自社や他社のポジショニングを考えた上で差別化していく戦略を立てることが非常に重要です。しかし、ポジショニングを行う場合でも単に市場シェアだけでポジショニングマップを作っても意味はありませんし、売上高や利益率による順位だけで位置を決めても戦略を決める上では役に立ちません。

マーケティングで正しい自社の立ち位置を理解するためには、競合他社も含めたポジショニングマップを作ることが重要です。ではそのポジショニングマップを作るために必要となる要素や作り方、作る際の注意点や実際にポジショニングマップを活用している企業の事例などを紹介していきます。

マーケティングポジショニングとは

マーケティングポジショニングとは、そもそも顧客から選んでもらえる企業となるために行います。すなわち、顧客に対して自社の商品やサービスがどういう位置づけで存在しているるのか、そして同様に他社の競合となる商品やサービスがどのような位置づけに存在しているのかを分かりやすく示すことで、自社の商品やサービスのどの部分を強化していくかを判断します。

すなわち、顧客から「この企業が販売しているものは〇〇が優れているら購入しよう」と思ってもらえるように他社から差別化するために非常に重要となるのです。そのために作られるポジショニングマップは、多くの場合商品・サービスごとに作られることが多いものです。特定の商品に対して「この商品は値段は同じくらいだけど利便性が高いから選んでもらえるだろう」あるいは「この商品は機能としては他社と変わらないけれど、ポイント還元などの付加価値が圧倒的に優れているから選ばれるに違いない」などを考えるのがマーケティングポジショニングで、そのために作成するものをポジショニングマップといいます。

マーケティングポジショニングが重要となる状況

他社の商品やサービスと差別化を行い、選ばれる企業となるためにマーケチングポジショニングの考え方やポジショニングマップの作成は非常に大きな意味を持ちます。特に、STP分析を行う際にはマーケティングポジショニングの考え方は外せない重要なポイントとなるでしょう。

STP分析とは、Segmentation・Targeting・Positioningの流れで行う一連の分析のことをいいます。セグメンテーションの段階では市場を分析する切り口を増やして市場のセグメント化を行うことで、顧客をニーズごとにグループ分けします。たとえば「値段よりもデザインを重視するグループ」や「デザインよりも利便性を重視するグループ」などのように、同じ商品を使っている顧客を細分化していきます。そのセグメンテーションが終わったら、ターゲティングとして複数のセグメントの中から他社よりも競争優位に立てるセグメントがどこかを見極め、参入するグループを決めます。すなわち「自社商品は値段では競合他社よりも高くなるがデザイン性が高いので、値段よりもデザイン性を重視する顧客をターゲットにしよう」というように、多くの顧客の中でも特に重視する顧客を決定するのです。そして、最後にポジショニングとしてターゲットとした顧客のベネフィットを掘り下げて検討し、価値を見出せるために最も有効なポジショニングを見つけ出します。値段よりデザイン性を重視する顧客のグループといっても、ある程度の限度が存在しています。また、実際の商品やサービスには値段やデザイン性だけではなく機能や持ち運びによる利便性など様々な要素があります。そういった要素をさらに向上させ、ターゲットと定めた顧客を最も満足させることができる、すなわち最もベネフィットを与えられる商品やサービスに昇華させるのがSTP分析の目的となります。

ポジショニングの基本となる四つの要素

ポジショニングを行う際、基本的には四つの要素で競合他社と比較し差別化を目指していくことになります。ここでは、その基本となる四つの要素について例も交えてみていきましょう。

商品・サービス

ポジショニングを行う際に重要となるのは、やはり商品やサービスそのものです。商品やサービスの機能や品質、デザインや耐久性といった部分で他の商品とは違う価値を持っていることをアピールします。また、もちろん低価格であることや使用している素材の品質なども差別化においては重要な要素の一つとなります。

たとえばバッグや服などは、ブランドによってそれほど大きくデザインが異なるわけではありません。どこのお店で買ったとしても、それなりに似た商品を手に入れることができるでしょう。しかしそれでも、小さな差異があるため消費者は店舗を選択することになります。同じような商品を売っている場合でも、そうした差異を作ることで選ばれることが非常に大切なことになるのです。

顧客サービス

さらに最近では、消費者は単に商品やサービスの良さや安さといった部分だけで購入する店舗を決めることは少なくなってきていると言われています。消費者は「顧客サービス」と言われる商品を購入する前後に生じるストレスを重視して店舗を選ぶことも少なくはありません。

予約が必要な商品であれば予約のしやすさ、すなわち在庫の豊富さがポイントとなることもあるでしょう。オンラインでの予約であれば、サイトの繋がりやすさやサイトの見やすさなども消費者がストレスを抱える一因になりかねません。また、配送する商品の場合は配送の速さ、自社で配送するのであれば梱包や配送の際の丁寧さ、そして購入した商品やサービスに質問や欠陥があった際に利用するサポートセンターの繋がりやすさや応対の丁寧さといった充実度も影響してきます。

現在では、消費者は商品を購入する時点だけで選ぶことはほぼありません。商品を購入する前の選びやすさや、商品を購入した後のサービスの充実さも、今後の商品選択ひいては企業選択に大きく影響を及ぼすのです。

商品のサービスというと、既に紹介したようにサイトの繋がりやすさや配達の速さといったシステム面の部分ですが、それ以外にももちろん「人」を重要視する消費者も少なくはありません。すなわち、商品の購入前や購入後に実際に消費者と接点を持って対応するスタッフの質も商品選択に大きな影響を及ぼすのです。

店頭で販売する場合、顧客に提供する際の知識量や誠実さを重視する人も多いでしょう。やみくもに自社の商品の良い点だけをプッシュする店員は不誠実だと考えて、自社の悪い部分や他社の良い部分もプレゼンした上で自社が優れていると説明できる店員の方が誠実な店員だと判断する人もいます。また、そうした知識量や販売力よりも、そもそも店員の身だしなみや言葉遣いによって商品やサービスを選ぶ消費者も少なくはありません。他にも店員を探している時にあまりにも待たされてしまったらそれだけで店舗を出るという消費者もいますし、疑問点があってコールセンターに連絡したら不誠実な対応をされたため二度と使わないと決める消費者もいるでしょう。

もちろん、逆に良い店員に巡り会ったことがきっかけで指名買いのように常にその店舗で購入することを決める消費者も多く存在しています。コールセンターで納得のいく結果が得られなくても、対応自体が良かったなら次の商品もその企業の商品を買おうとする人もいるでしょう。そうした人が与えるサービスの質も消費者の選択に大きな影響を及ぼします。

イメージ

ポジショニングを決める上での基本要素としては、最後にイメージも忘れてはいけません。消費者が商品やサービスに対して抱くイメージを極限まで高めることも、競争優位に立つための要素となってきます。たとえばオーダーメイドが可能な商品を販売したり、フルオーダーだけではなくセミオーダーの商品を販売したり、あるいは圧倒的にデザイン性が優れていて多くの消費者が憧れを抱くような商品を販売するのもイメージ戦略となるでしょう。イメージの要素を満たすためには、消費者に商品を使用できる機会を想起させることが非常に重要なポイントとなります。

また、競合他社に関するイメージもポジショニングを決定する際に重要になってきます。競合製品に関してまるっきりとって変わるようなライバル関係の位置づけとして商品を販売するのか、それとも全く別のもので他社同士ながら共存できる商品を販売するのか、というポジショニングでも消費者に与えるイメージは大きく異なるでしょう。

すなわち、イメージとは商品やサービスに触れること、あるいは所持することで得られる特別感や満足感を重視することとなります。仮にブランド力がある企業であれば、それだけでイメージ戦略は成功していることになるでしょう。

マーケティングポジショニングにおけるマップの作り方と使い方

マーケティングポジショニングを考える上では、ポジショニングマップを作り使いこなさなければなりません。ポジショニングマップを作る上では、顧客ターゲットを作成して考えていくことが重要です。ここでは、例として「家でも仕事でも持ち運んでPCを使う若い女性」を顧客ターゲットに据えて、「モバイルPC」を例に出しながらマップの作り方と使い方を解説していきます。

【作り方①】KBFの抽出

ポジショニングマップを作る際には、まずKBFを抽出しなければなりません。KBFとはKey Buying Factorの頭文字をとったものであり、消費者が商品やサービスを購入する際に購買決定要因となるものです。ポジショニングマップを作る際には、まずこの商品やサービスに関する顧客の一般的なKBFを知り、決め手となる要素を生み出す準備をしなければなりません。たとえばモバイルPCであれば「軽い」や「バッテリーが長く持つ」、「大きくても軽くて持ち運びやすい」、「仕事で使えるようにシンプルな見た目」などが一般的なKBFとなるでしょう。この一般的なKBFの抽出には年齢や性別、使う状況などは特に関係ないので、とにかく一つでも多くのKBFを出していくことが大切となります。

【作り方②】ターゲットのKBFを抽出

一般的なKBFを抽出することができたら、次は自社のターゲットが重視するKBFだけを抽出していかなければなりません。たとえば、今回の事例であればPCを持ち運ぶ若い女性がモバイルPCを購入する際のKBFを抽出することになります。この事例であれば「女性であっても持ち運びに負担が少ない軽さ」、「外出先でも気兼ねなく使える内蔵バッテリー」、「化粧ポーチなどの持ち物が多い女性の鞄にも入る大きさ」、「外で使っても恥ずかしくなく、さらに自室でもおしゃれにおけるデザイン性」、「PCとしてストレスなく使うことができる一般的な機能」、「知っている人が多くサポートを受けやすいブランドであること」などを挙げることができるでしょう。

この時、先ほどの第一段階で抽出した一般的なKBFと重複しているものもあれば「大きくても軽くて持ち運びやすい」や「シンプルな見た目」のようにターゲットのKBFとは両立しないため、この段階で脱落してしまうKBFも多く出てくるでしょう。この脱落するKBFが多いと次にポジショニングマップを作る際には最初からターゲットのKBFのみを選出する方が効率的ではないかと考える人もいますが、それは誤りです。最初からPCを持ち運ぶ機会が多い若い女性に限定してKBFを抽出するとバイアスがかかってしまい、出てくるべきKBFが出てこなくなってしまう恐れがあります。またターゲットのKBFが一般的なKBFと比べてどのような違いを持っているかを知ることもマーケティング戦略を立案する上では非常に重要となるので、必ず一般的なKBFの抽出から始めるようにしましょう。

【作り方③】ターゲットのKBFを他社競合製品と比較

ポジショニングマップを作る際に重要となる次のフェーズとして、ターゲットのKBFを他社の競合製品と比較していきます。ターゲットのKBFを一つずつ見ていくことで「デザインが良くバッテリーも長いという点では優れている」ものの「選ばれるブランド、軽くてストレスなく使いやすいという点では劣っている」など、自社商品がどのような立ち位置にいるかが分かってくるでしょう。こうした要素の中からポジショニングマップを作ることになりますが、マップを作るための軸には優位性が多い部分を選ぶようにしましょう。

たとえば、この事例であれば「デザインが良くバッテリーも長い」という点が自社商品の他社商品に対する優位性となります。これを軸に、ポジショニングマップを作っていくことにしましょう。

【作り方④】ポジショニングマップの軸を選定

具体的にポジショニングマップの軸となる要素が決まったら、軸を決めて実際にマップに書き込みを始めていきます。上記の作り方③で優位性が多い部分がポジショニングマップの軸になることを説明したため、この事例では以下のように軸が決定されます。

・Y軸→プラス方向:デザイン性が高い、マイナス方向:デザイン性が低い
・X軸→プラス方向:バッテリー時間が長い、マイナス方向:バッテリー時間が短い

この軸を元に、第一象限から第四象限まで自社を含めた市場に参入している商品を配置していきます。この軸を元に、全ての商品をマップ内に配置していくことになるので、ポジショニングは慎重に行わなければなりません。価格やバッテリーの持続時間などは調べやすく分かりやすい指標となりますが、デザイン性などは個人の主観が強く影響する部分ですので、決して主観的にならないように市場の現在の売れ行きなども重視しながらマッピングしていきましょう。このマッピングが終われば、ポジショニングマップの作成は終了となります。

【使い方①】競合他社と比較する

作成したポジショニングマップは競合他社と自社商品を自覚するために使われます。実際にポジショニングマップを作ってみると、今まで企業として大きく差別化しして自社商品を売っているつもりだったのに、消費者視点ではあまり差別化されていなかったことが分かることもあるでしょう。たとえば自社としては価格で少し差別化をしていて十分だと感じていたのに、ターゲット顧客のKBFに基づいてポジショニングマップを作ってみると、そもそも価格は選定基準に入っていないため大きな意味を持たないことに気付くかもしれません。

ポジショニングマップは「うちの会社は○○しているつもり」という企業の固定観念を払拭するために非常に役立ちます。消費者が何を重視しているか、それが本当に達成できているかを消費者目線で客観的に把握していきましょう。

【使い方②】競合との立ち位置を決める

ポジショニングマップを作った後は、競合他社との比較だけではなく今後の自社の立ち位置を決めることにも役立てることができます。たとえばマッピングした上で差別性を強調できるポジションが既に空いているのであれば、そのポジションを狙うことで競合他社との無用な競争を避けて簡単にターゲット顧客にアプローチすることができます。市場に対して、後から参入するということはそれだけで大きなハンデとなります。しかし競合他社がいないポジションに参入するのであれば、そもそもそのハンデが発生することもないので比較的楽に参入ができるでしょう。

もちろん、後から参入するという大きなハンデを持っていても、それを圧倒的な優位で覆せる勝算を持っているのであれば競合他社と正面対決をすることも決して悪いことではありません。正面対決に勝利する方が、今までの競合他社が確保していたシェアも奪取できるため企業としてのベネフィットは大きくなります。もし競合他社と正面対決を考えているのであれば、まずはポジショニングマップを使って「どこが真の競合なのか」を知ることを優先しましょう。市場に会社がどれだけある状態でもそれぞれの会社が商品を販売する上で優先している項目は基本的に異なるため、実際に正面対決をする企業はそれほど多くはないのが現実です。そのため正面からライバルになる会社がどこかを判断し、そこの商品に関して深く掘り下げてメリットとデメリットを知ることで、その会社に勝てるような戦略を組み立てることができるようになるでしょう。

現在のように多くの企業が参入している市場において、シェア100%近くを獲得し圧倒的な勝利をすることはまず不可能なことです。それよりも、他の9割の企業には劣っていても1割のライバル企業に勝つことで確実に市場における存在感をアップさせることを優先する方が良いでしょう。

ポジショニングマップを作る上での注意点

ポジショニングマップは現在の自社の状況を客観的な視点から分析し、さらに今後の競合他社がどの会社になるのか、そしてその競合他社に勝つための戦略はどのような戦略かを考えていくのに非常に役立つマップです。しかしながら、ポジショニングマップは適当に作れるものではありません。どうすれば正しくポジショニングマップを作れるのか、作成する上での注意点を確認してみましょう。

必ずターゲットのKBFを使う

忘れてはならないのは、必ずターゲットが重視しているKBFを使ってマップの軸を作るということです。たとえば例に出した事例であれば、多くの人はPCを購入する際にメーカーも重視するものですが、今回のターゲットにおいては「メーカーの知名度」は重視していないためポジショニングマップを作成する上での軸にはならないことが分かります。

もしここでターゲットが重視していないのにも関わらずメーカーの知名度を軸に組み込んでマップを作ってしまうと、他の人には選ばれてもそもそものターゲット顧客に届かない商品となってしまいます。それでは仮に売上が発生してもポジショニングという観点では失敗となるので注意してマップを作るようにしてください。

ターゲットに合うポジショニング軸を使う

ターゲットのKBFを必ず使うのと同じくらい大切なのが、ターゲットに合ったKBFを使うことです。たとえば同じ若い女性であっても、PCを持ち運ぶ必要がなく「家でだけ使うために購入する人」と「外出先で使うために購入する営業職の人」は重視する項目が異なってきます。さらに、同じ営業職であっても都心部の営業職の場合は電車での移動が多くなるもののスターバックスなどの充電する機会が多いためバッテリーよりも重量を重視するでしょう。しかし一方で、地方の営業職であれば車での営業が多い代わりに充電スポットは都心部ほど多くないので少し重くなってもバッテリーの持ちが良いモバイルPCを選びがちです。

このように、同じように見えるターゲットであっても用途やライフスタイルによって大きくKBFは異なります。しっかり分析するためにもKBFの確認は怠らないようにしましょう。

マップの軸は異なるものを使う

また、ポジショニングマップを作る際に犯してしまいがちなミスとしては似た軸を使ってポジショニングマップを作ってしまうというミスです。そのようなポジショニングマップはマップ自体がおかしくなってしまう可能性が高いので、どんなに苦労して作ったとしても正しいポジショニング選択の役には立ちません。

たとえば「価格と品質」など、ある程度相関関係があるものをY軸とX軸に据えても全ての企業が同じような位置に集まってしまい分析に支障が出てしまうでしょう。そうならないためにも、軸に据える際には異なるKBFにすることはもちろん、相関関係のないKBFにしていく必要があります。

マーケティングポジショニングの成功事例7選

消費者のKBFをとらえた上で自社のポジショニングを決めるマーケティングポジショニングという戦略は、成功すれば競合他社を出し抜き圧倒的な優位を手に入れることも不可能ではありません。しかしながら、当然他の企業も同様に考えてポジショニングを決定しているため、どのような立ち位置に優位性があるのか分析するのは非常に困難です。

では、そんな困難なマーケティングポジショニングにおいて成功を収めた企業はどのような企業があるのでしょうか。ここでは、最後に成功事例として七つの事例を紹介していきますので他社との差別化の参考にしてください。

ポカリスエット

現在は「熱が出た時に飲むもの」などのイメージが強いポカリスエットですが、実は販売当初はスポーツ飲料というポジショニングで販売されていました。当時はスポーツ飲料といってもそれほど種類がなかったためポジショニングは成功していましたが、のちにアクエリアスなどの競合品が出てきたことでポカリスエットのシェアは大きく下がってしまいました。

この時、ポカリスエットはアクエリアスと自分の立ち位置が同じものであることに気付き、再度ポジショニングを見直して「スポーツ飲料」という立ち位置から「健康に良い清涼飲料水」という立ち位置へと変更したのです。この結果として今までスポーツ後にポカリスエットを飲んでいた既存の顧客はそのままに、「熱が出た時の水分補給としてポカリスエットを選択する」という選択肢や「喉が渇いてお茶の気分がないけれど、ジュースでは健康に支障が出るかもしれないから他の飲み物が飲みたい」という選択肢にポカリスエットを浮上させることができたのです。

特に後者の「お茶以外が飲みたいけどジュースには抵抗がある」という時に選ばれる飲み物は当時はそれほど多くなく、ポジショニングマップを作ったことによりポカリスエットは競合他社のいない市場で圧倒的な優位を獲得することに成功できました。このように、今のポジションに強力な競合製品が出てきた時に移動するポジションを探す時に、ポジショニングマップは非常に役立ちます。

メリット

花王のメリットといえば、1970年代から売られているロングセラーのブランドです。圧倒的に知名度の高いメリットですが、実はポジショニングマップを使いポジションを変更したことで現在の圧倒的な地位を獲得したとされています。

発売当初のメリットのコンセプトは「フケ・かゆみを抑えることができるシャンプー」でした。現在では毎日髪を洗うことが一般的ですが、実はメリットが発売された1970年から1980年代の前半までは毎日髪を洗う人はそれほど多くなく、週に2~3回の洗髪が一般的な時代だったと言われています。だからこそフケやかゆみに悩む人も多く、特に女性にとってフケは大きな悩みとなっていたため、メリットの悩みを解決する「ジンクピリチオン」という成分が配合されている謳い文句が人気を集めました。そのおかげで順調に売上も伸びシャンプー業界の中で最も愛されるブランドとしてメリットの知名度は確固たるものになりました。

しかし、その後のライフスタイルの変化によって一般家庭でも毎日の洗髪が常識となったことによりフケやかゆみに悩む人の数は激減しました。そうするとメリットの「フケ・かゆみを抑える」というコンセプト自体に魅力がなくなってしまい、多くの消費者はメリットよりも「髪をサラサラにする」や「ダメージを受けた髪をケアする」という謳い文句のシャンプーに移っていったのです。そうした需要に応えて多くのシャンプーが競合他社から発売されたこともあり、メリットの持つイメージは「悩みを解決してくれるシャンプー」から「なんとなく古臭いシャンプー」にまで変化してしまったと言われています。

こうした状況で、花王はメリットの売上を復活させるためにポジショニングマップを活用しました。多くの競合他社を分析した結果、家族が自分の好みでシャンプーを使い分けている家庭が多く「家族全員が安心して使えるシャンプー」というポジションが空いていることに目をつけたのです。そこで、以前の「フケ・かゆみを抑える」というコンセプトを「弱酸性」に変更し「家族全員に向けたシャンプー」として戦略を変更したのです。元からブランドの認知度自体は高かったメリットであるため、家族全員が使えるという安心感から一度離れた顧客も戻ってきて売上を取り戻したと言われています。

さらに、メリットの快進撃はここでは終わりません。「家族全員が安心して使えるシャンプー」としての地位を確立した後は、2009年に「親子で使えるトリートメント」というコンセプトで、髪の毛が絡まりやすい母親や女児に向けた商品を販売しました。さらに2013年には髪が短くて毎日リンスを使うのが面倒だと思っている男性に向け「父と息子のシャンプー」というコンセプトで「リンスのいらないシャンプー クールタイプ」を発売、続いて2015年には家族共用のシャンプーよりも自分だけのシャンプーがほしいという女子中学生~女子高生の需要を満たす「地肌クレンジングシャンプー」も発売しました。

このように、メリットは時代の変化に応じて変わる消費者の需要に対応できるコンセプトの商品を次々に生み出しています。ポジショニングマップを作って地位を確立したことに安心せず、次のポジショニングを行うことでさらなる成功を得られるという事例といえるでしょう。

AKB48

国民的アイドルとして知られているAKB48ですが、実は彼女たちもポジショニングマップを活用することによって競合がいないポジションに目をつけ、そのポジションで圧倒的な優位を獲得したグループとして知られています。

AKB48が出てくるまで、アイドルを始めとして芸能人といえば「年に一度のライブでしか会うことができない」や「テレビの向こう側の存在で、自分とは遠い場所にいる人」というイメージを強く持っていた人が多いのではないでしょうか。ファンクラブなどに入れば交流することができても、それでも抽選で選ばれた人しか交流できないというケースも決して珍しくはなく、芸能人に頻繁に会うことは一般的には不可能だと言われていました。

しかしながら、AKB48は「会いに行けるアイドル」として一世を風靡しました。実際、握手会を頻繁に行うだけではなくライブも毎週末に行うことでチケットを取りやすくするなど他の芸能人と比べて圧倒的にAKB48に会いやすいと感じているファンの人も多いのではないでしょうか。さらに知名度が上がっている現在でもCDを購入することで握手会に参加することができるなど、当初のコンセプトを崩さずに「もっとアイドルに頻繁に会いたい」というニーズを持つ顧客にベネフィットを与え続けています。

ヘルシア緑茶

メリットだけではなく、ヘルシア緑茶という飲料分野でも花王はポジショニングマップを活用しています。ヘルシア緑茶が発売された2003年、緑茶分野には既に「お~いお茶」や「爽健美茶」、「生茶」などの定番商品が売られていたため、圧倒的な知名度を持つ花王であっても参入は難しいと言われていました。しかし、花王がポジショニングマップを作ってみたところ、そうした商品は全てペットボトルで飲み物を買うことが多い若者を主なターゲットにしていることが判明しました。

しかし、実際コンビニやスーパーでお茶を買うのは、若者だけではなく営業などで外回りを行っている中年世代も多く存在しています。そこで花王は、既存の緑茶の商品とは違い「飲むことで痩せやすい身体を作る」というコンセプトでヘルシア緑茶を売り出し、緑茶市場に参入しました。

今までの緑茶商品に比べて「健康に良い」という付加価値があるためヘルシア緑茶は普通の緑茶よりも少し価格帯が高くなってしまいましたが、健康に気を遣い金銭的な余裕が若者に比べてある中年世代にとってはそれほどデメリットとなりませんでした。むしろ「高いからこそ効果があるに違いない」と期待が高まり売上に貢献する要因となったと言われています。これはターゲット顧客のKBFに「価格」が含まれていないことに気付いたからの成功事例になるでしょう。多くの場合、商品を売るためには低価格路線を意識してしまいますが、ターゲット顧客によってはそれほど価格を抑える必要性がないことをヘルシア緑茶の事例は示してくれています。

iPhone

iPhoneは「シンプルさ」というデザイン性に目をつけてポジショニングを行うことによって圧倒的な優位を獲得しました。iPhoneが出てくるまでの携帯電話およびスマートフォンの市場は「どれだけたくさんの機能をつけることで使いやすいものにするか」という観点で争われていました。

しかしApple社はポジショニングマップを作ることによって、必ずしも消費者が多機能さを求めていないことに気付いたのです。むしろシンプルで使いやすい本体を販売し、その後は購入した消費者自身が自分の希望する用途に合わせてカスタマイズすることを望んでいる顧客をターゲットとしたのです。まさにApple社の標榜する「Think Simple」に見合った事例だといえるでしょう。

このポジショニングに成功した結果、iPhoneのユーザは右肩上がりに上昇し、現在ではスマホを使っている人の半数を超える約70%がiPhoneユーザーであるとも言われています。多機能性を重視する市場において、競合他社が存在しない場所を確保したApple社の戦略がちだといえるでしょう。

シーブリーズ

シーブリーズの事例は、商品のコンセプトはそのままにターゲット顧客を変えたことによって成功を収めた事例として知られています。現在は高校生が部活後に使っているイメージが大きいシーブリーズですが、そもそも日本で発売された1980年代には「20代~30代の海に行く男性のデオドラント商品」として売られていました。実際、テレビのCMでも海をイメージしたものが多く放映され、男性向けの商品として売られていたのです。

しかしライフスタイルの変化やバブルの崩壊により、頻繁に海に行く人は少なくなりました。必然的にシーブリーズの需要も下落していきますが、そこでシーブリーズは10代の学生へとターゲット顧客を変更します。当時、デオドラント製品は他にも売られていましたが10代向けに特化したものはなく、どの年代の人でも同じ商品を使っている状況でした。

しかしシーブリーズが「爽やか」や「部活や体育の後」といったコンセプトで売り出すことによって「大人とは違う自分たちだけの商品を使いたい」という需要を持つ中学生~高校生に支持されることになったのです。このターゲット顧客の変更の時点で、シーブリーズのCMも海をイメージした男性向けのCMから、現在多く放映されているような中学生~高校生の爽やかな青春をイメージしたものに変更されました。このように、プロモーションの内容を変えるだけでターゲット顧客を変えることも決して不可能なことではありません。

ハーゲンダッツ

多くの商品が低価格帯で発売することによって消費者にとって買いやすく身近な商品というポジションを狙って要る中で、ハーゲンダッツは敢えて「高価格」というポジションをとることで優位性を獲得しています。

実はハーゲンダッツが販売された当時、「高級アイスクリーム」というポジションには既に「レディボーでン」が存在していました。しかしながら、ハーゲンダッツはレディボーデンの位置していた「高級アイスクリーム」というポジションを奪取することに成功したのです。その要因になったと言われているのが、販路の選択です。実はレディボーデンは高級アイスクリームというポジションを確保しながらも、販路が広く駄菓子屋でも購入することができるアイスクリームでした。そのため、消費者からは「高級感」が認識されず、単に「美味しいけれどどこでも買える高いアイス」という認識を持たれてしまったのです。

ハーゲンダッツはこの矛盾に目をつけ、自身の販路を「デパート」や「高級スーパー」、あるいは「直営店」に限定してプレミアム感を演出しました。このように販路を限定的にすることにより「高級アイスクリーム」という世界観を強固なものにし、後から参入するという不利な状況ながらもレディボーデンとのポジション争いに勝利したのです。

マーケティングポジショニングを意識して競争を優位に進めよう

マーケティングは単に価格を下げて消費者の手に取りやすい商品を売れば良いだけではありません。商品によっては、ヘルシア緑茶やハーゲンダッツの事例のように、敢えて高価格の路線を貫くことで優位なポジションを獲得することもできるでしょう。商品の売れ行きに悩んだ時には、今一度マーケティングポジショニングを見直すことで優位に戦略を進めることもできるかもしれません。

また、マーケティングポジショニングを行う際にはインフルエンサーを活用するのもおすすめです。インフルエンサーを活用することによって、ターゲット顧客に対して従来の広告よりもクリティカルなアプローチが可能になるでしょう。もしターゲット顧客に対して以前よりも強固なプロモーションを行いたいのであれば、ぜひトリドリマーケティングにご相談ください。

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