エンゲージメントマーケティングで顧客との関係性を構築しよう

エンゲージメントマーケティングとは

インフルエンサーマーケティングやバズマーケティング、ステルスマーケティングなど数多くのマーケティング戦略があることは一般にも広く知られています。しかし、当然ながら色々なマーケティング手法の中にも時代に合っているものと合っていないものが存在し、流行り廃りも存在しています。

そんな様々なマーケティング手法の中でも、エンゲージメントマーケティングという手法は様々な場面で目にすることの多いマーケティング手法の一つです。近年注目を集めているエンゲージメントマーケティングはどのようなマーケティング手法なのか、なぜ注目されているのかの理由と一緒に開設していきます。

エンゲージメントマーケティングの意味

「エンゲージメント」というと、婚約指輪を意味するエンゲージメントリングを連想する人も多いのではないでしょうか。「婚約」や「約束」などの意味を持つエンゲージメントという言葉を用いるエンゲージメントマーケティングは、婚約指輪などのイメージと同じく企業と顧客の繋がりを強化することによって売上を伸ばすマーケティング手法です。

企業と顧客との間のエンゲージメントを高めることで、顧客が他社の商品を購入することを防ぐことが可能になります。つまりエンゲージメントマーケティングを成功させることによって、単なる自社のファンであっただけの存在を、他社に見向きもしないような優良顧客へと成長させることができるのです。

そうして優良顧客へと成長したユーザーは、めったなことでは自社から離れることがないため企業の売上がある程度一定になるというメリットがあります。さらに顧客としても継続的に使っている企業には愛着が湧くため、新商品が出た時の感想や不便な点を企業に伝える手間を惜しまなくなったり、企業から依頼されたわけではなくても自発的に自分の周りの人に対してSNSなどの手段も講じながら企業の商品やサービスを宣伝してくれたりすることも珍しくはありません。

すなわち企業にとってエンゲージメントマーケティングの成功は一定の売上が担保できるだけではなく、さらに広告費を払わなくても自発的に広告塔になってくれるような熱狂的な顧客が獲得できたり、顧客から質の高いフィードバックが得られるというメリットがあるのです。

エンゲージメントマーケティングが注目されている理由

今までも、企業は顧客に対して質の高い商品やサービスを提供することを通して売上を安定させてくれる顧客を獲得することに注力してきました。しかしながら、現代ではそうした時代よりもさらにエンゲージメントマーケティングが注目を集めています。では、なぜ最近また再びエンゲージメントマーケティングが注目を集めているのでしょうか。マーケティングの歴史の変遷を振り返りながら確認してみましょう。

まず、戦後の大量生産・大量消費の時代は企業はそれほど顧客との関係性を重視していませんでいませんでした。質の高い商品やサービス、今まで他の企業が出したことのない商品やサービスを開発し、それらをテレビや雑誌などで広く知らせることで企業はプロモーション活動に関してはそれほど力を入れなくても自然と売上を伸ばすことが可能でした。このように、特定の顧客に向けた企業努力ではなく、多くの顧客が受け入れてくれるものを出すことを重視するマーケティング戦略のことをマスマーケティングといいます。

一定の効力を発揮したマスマーケティングですが、次第に商品やサービスが溢れて顧客の好みやニーズが多様化するようになり、消費者全体ではなく特定の顧客の需要を満たすような企業戦略が求められるようになっていきます。たとえば「女性全体」が求めるものを企業が提供するのではなく「10代の女性が好むもの」などを売り出すことによって、今までよりも売上は下がるものの確実に商品を売ることができるため在庫リスクなどを低減させることが可能になります。このマーケティング手法をターゲットマーケティングと呼び、現代でも大企業がほぼ独占している市場に対してベンチャー企業といった競争力で劣る企業が対抗するために重宝されているマーケティング手法として広く知られています。ターゲットマーケティングは消費者のニーズを満たすことを目的としているので、価値観が多様化する現代においてまさに画期的なマーケティング手法だと言えるでしょう。

そしてターゲットマーケティングで自社に興味を持った顧客との関係性を強化し、自社の圧倒的なファンへと成長させることができるのがエンゲージメントマーケティングです。全ての消費者の心を掴み全ての消費者のニーズを満たすのが非常に難しい現代社会においては、一度自社に対して偶然であっても興味を持ったユーザーを大切にすることで自社の売上を安定させて競争力を獲得することが非常に重要な命題になっています。つまり新たな顧客を獲得することが大切なのはもちろん、エンゲージメントマーケティングによって一定数の顧客を獲得することができるだけで、それはそのまま他の競合他社に対する優位性の獲得を意味します。企業も増えて顧客の選択肢が増えている現代だからこそ、エンゲージメントマーケティングの重要性が高まっているのです。

エンゲージメントマーケティングの実際の成功事例7選

顧客との強固な関係性を構築することにより、企業として収益を安定させることができるのがエンゲージメントマーケティングのメリットです。では、実際にはどのような企業がどういった方法でエンゲージメントマーケティングを成功させているのでしょうか。ここではエンゲージメントマーケティングの成功例を7例紹介していきます。それぞれの企業が関係性を構築する方法に着目しながら、事例の参考にしてください。

スターバックス


スターバックスは様々なマーケティング戦略を効率的に取り入れていることでも知られている企業です。もちろんエンゲージメントマーケティングに関しても例外ではなく、効果的に取り入れることで客層を増やしています。特にスターバックスは、コーヒー単価が500円~600円という価格帯のカフェの中では店員の接客が親切であることが知られているカフェです。居心地を重視するカフェにおいて、実店舗における店員の接客レベルが顧客のエンゲージメントに影響することは言うまでもないでしょう。飲み物のカスタマイズ方法を教えてくれるだけではなく、注文品にメッセージを書くなど顧客の満足度を高める取り組みによって老若男女問わず様々な立場の人に愛されるカフェとして全世界で支持を得ています。

さらにスターバックスは2008年から「My Starbucks Idea」というサイトの運用を開始しています。これは顧客がスターバックスに求めるアイデアを投稿し、スターバックスが実際にそのアイデアに対する返答をする場です。実店舗のコミュニケーションはどうしても一方通行になってしまいがちですが、こうした双方向のコミュニケーションを取り入れることによって顧客エンゲージメントを高めることが可能です。企業対多数の顧客というコミュニティを作って顧客の企業に対する帰属意識を高めるコミュニティマーケティングの手法を取り入れながら、顧客エンゲージメントを高めることで「カフェに行きたい時は、他のカフェではなくとりあえずスターバックスを探してみよう」という意識を顧客に持たせることに成功しています。

パタゴニア


アウトドアウェア商品を取り扱い企業であるパタゴニアによるエンゲージメントマーケティングは、同社商品の利用に対する顧客のモチベーションをアップさせることで成立しています。アウトドア商品はどうしても一般的なアウターファッションに比べてファン層が限定されてしまう傾向がありますが、パタゴニアはクライミングやフィッシングなどパタゴニアの商品を使っているシチュエーションを実際にInstagramなどに投稿することによって、アウトドア初心者でも安心してパタゴニア商品を使いやすい状況を企業が主導で作り出しています。もちろん商品自体の品質も高いため、一度パタゴニアの商品を使った初心者が「これからもパタゴニアで道具を揃えていこう」という熱狂的なリピーターになることは言うまでもありません。

さらにパタゴニアは自身のFacebookなどでCSR活動に関する報告なども行うことにより、日常的にアウトドアを楽しんでパタゴニアの商品を使いたいと考えている層以外にも安心感を与え、自社の知名度をアップさせることにも成功しています。現在、消費者は「単に価格が安くて品質が高い」だけの商品を使うことでは満足しません。「価格が安くて品質が高い」ことは当然として、その上で「商品を使うことで地球環境の保護などの社会貢献が簡単にできるもの」を求める傾向が年々強まっています。パタゴニアのプロモーション活動は、そうした消費者のエンゲージメントを高めるために非常に理にかなっている事例だといえるでしょう。

Tokyo Otaku Mode

 

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Zen Kirby 🏮 — See more by TOM Special Creator @captaindangerous at otakumode.com/CaptainDangerous

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Tokyo Otaku Modeは、数あるECサイトの中でもエンゲージメントマーケティングの理論に基づく工夫が凝らされていることで知られているECサイトです。そもそも日本のオタク文化を世界に届けることを目的に作られたECサイトのため、基本的には顧客は日本人だけではなく外国人も想定されています。そのため、購買意欲を促進させるためにSNSの中でも世界での利用者数が約24億人に迫り最も使われていると言われているFacebookを中心にプロモーション活動を行っています。

また、紹介する商品も日本を代表するオタク文化としてよく知られているコミケやポケモンだけではなく、日本でも知っている人が少ないようなマイナーなジャンルまで紹介しています。「いいね!」の数も約2,000万を維持しており、それだけでも注目度が非常に高いページであることが分かるでしょう。ECサイトの目的は物を売ることですが、Amazonを始めとして数多くのECサイトがある中で単にページを作成しているだけでは使用者数を伸ばすことはできません。このECサイトのように、ターゲットとする購入層のエンゲージメントをどのようにあげるかを考えて、時と場合に応じて適切なSNSを利用することもエンゲージメントマーケティングにおいては重視すべきものだと言われています。

Apple

 

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“Don’t focus your eyes just in the center of the image; every corner can tell you a different story.” #mirrored #ShotoniPhone by Marcelo N. @marcelonava_

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iPhoneを始めとした商品で世界中にシェアを拡大しているAppleもエンゲージメントマーケティングを効果的に活用している企業の一つです。実は以前、AppleはWindowsのようにMac OSを互換機メーカーに搭載していることを許可している時代がありました。これにより、Apple社の商品を持っていない消費者でも簡単にMac OSを利用することができるなど非常に広い消費者に対して知名度をアップさせることに成功しています。

しかしながらAppleはその路線を変更し、Apple Storeでしか商品の取り扱いを許可しないように制限をかけました。一般的に考えれば、顧客のアクセスポイントを絞ることは顧客の選別にも繋がり売上が減少しても仕方のないマーケティング戦略のように思えるでしょう。しかしながら、Apple Storeでしか商品を購入できないということは顧客体験のイメージを統一する効果をもたらしました。すなわち洗練された店内でAppleの商品を買うという体験自体が、顧客の満足度を高める結果となりエンゲージメントを高めたのです。

以前からApple商品を使う顧客は、商品のスペックはもちろん洗練されたデザインを好んでいる顧客が多いと言われていました。そのためApple Storeに販路を絞るAppleの戦略はそれほどデメリットにはなりませんでした。さらにそもそもApple Storeが生活圏内にない顧客に対してはオンラインショップでフォローすることもできていたため、販路を絞ったことで売上がダウンすることもありませんでした。顧客の購入方法のフォローはもちろん、顧客が自社に求めているイメージも熟知していたからこそエンゲージメントマーケティングに成功することができた例だといえるでしょう。

ザッポス


ザッポスは靴の販売をメインに行っているアメリカの企業です。ファッション業界のオンラインショップは既に広く浸透していますが、その中でも靴に関しては同じサイズであっても履き心地などが大きく異なるためオンラインには不向きであるという意識が消費者の間に根強く残っていました。さらにサイズや履き心地がフィットした靴であっても、実店舗に比べてオンラインショップでは防水や汚れのケアなどの問い合わせがしづらいということも消費者の懸念事項となっていました。

しかしながら、ザッポスはECサイトとしては珍しく自前の巨大なコールセンターを設置することによってその弱点を克服することに成功しました。一般的にコールセンターの対応というと一件で5分~10分が平均的な所要時間ですがザッポスの場合は一件あたりの通話時間が一時間を超えることも珍しい話ではありません。採算を度外視しているようにも見えるザッポスの顧客対応ですが、結果的に多くの顧客のエンゲージメントを高めることに成功しました。2009年にAmazonに買収されたザッポスですが、その後も高い顧客満足度と圧倒的なブランド力を維持している稀有な例として知られています。

ロペピクニック

 

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女性向けのアパレルブランドであるロペピクニックは、一度は下がった売上をエンゲージメントマーケティングの有効活用によって回復された事例として広く知られています。2014年頃からテレビの広告を中心に知名度を高めて売上を順調にアップさせていたロペピクニックですが、テレビ広告が視聴者にとって目新しいものではなくなると顧客のエンゲージメントも下がってしまい、それに比例して売上額も減少してしまいました。

その状況を打破するためにロペピクニックが試みたのが、エンゲージメントマーケティングを利用した手法です。ロペピクニックは顧客の満足度を調査することによって、客離れの主な原因にレジでの待ち時間の長さがあることを突き止めました。しかし一方で、満足度の高い優良顧客はブランドのコンセプトだけではなく店舗のスタッフに対しても高い親近感を抱いていることが判明したのです。そこでロペピクニックは、レジ前での待ち時間を短縮させることと、さらなる店舗スタッフへの親近感の獲得によって売上を回復させられると仮定し、そのための取り組みを開始しました。

ロペピクニックが行ったのは、ポイントカードをスマホアプリに内蔵する対策です。今まではコーディネートなどを参考にできるスマホアプリに加えてリピーターがポイントを貯めるためには紙のポイントカードを利用していたことで、レジ前での待ち時間が長くなってしまっていました。しかしながらスマホアプリにポイントカードを内蔵することで、誰でも簡単にポイントカードを出せるようになり待ち時間が劇的に短くなりました。消費者としてレジに並ぶ時、誰もが目的の店舗のポイントカードを財布の中から見つけ出すことに苦戦してしまう経験を持っていますが、ロペピクニックはこれをシステム的に解消することで顧客のエンゲージメントを高めることに成功したのです。

さらにECサイト上でも店舗ごとのスタッフコーデを充実させることによって、それを見た顧客が実店舗に買いに来るだけではなくECサイト自体の売上額を伸ばすことにも成功しました。この2つの策によってロペピクニックの売上は劇的に回復し、現在でも安定した企業として広く支持されています。

三井住友カード

 

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エンゲージメントマーケティングの事例というと、ここまで紹介してきた7例のように小売店舗のものが多くなってしまいます。しかしながら、三井住友カードのようにクレジットカードの会社がエンゲージメントマーケティングによって成功している事例もあります。三井住友カードは2019年の10月から「Custella」というシステムを導入し顧客情報の管理を始めています。これはカードが使われている日時や大賞などの実績データを分析することによって三井住友と取引している企業が顧客のニーズやインサイトを分析するための新たな施策です。個人が特定されないように加工されたこれらのデータは、三井住友と提携している企業にとって非常に利用価値の高い情報であることは言うまでもないでしょう。

さらに、こうした事業者向けの情報だけではなく消費者目線でのエンゲージメントマーケティングの活用もしたのが三井住友カードです。三井住友カードは、既に旅行の補償がついているカードを利用しながらも旅行の際に補償内容が同じ他の保険に入るなどの無駄な行動をしてしまっている消費者が多いことに着目しました。もちろん今までもカードの契約時やメールマガジンなどで三井住友カードが持つ長所を消費者に啓蒙してきていますが、そうしたものに全て目を通して覚えている消費者の方が少ないのは実体験としても実感が湧くでしょう。

そこで三井住友カードは、カラフルで対話形式のメールマガジンを発行することによって消費者に対して分かりやすく自社カードのベネフィットを普及することに成功しました。消費者からの要望も可能な限り取り入れ、取り入れたことをメールマガジンで発表することによってさらに顧客エンゲージメントを高めることに成功したのです。これらの方法はSNSを用いて普及していく案も当初は存在していましたが、SNSで全ての消費者に対して「こんなに顧客目線の活動をしている」という発表をすることは押しつけがましいという声が社内に多かったことで、メールマガジンによる普及が行われたと言われています。

こうした事業者と消費者の双方に対するエンゲージメントマーケティングを高めることによって、三井住友カードの利用者数は格段に増えサイトのアクセス数も9倍以上になり40万アクセスを記録していると言われています。

エンゲージメントマーケティングを用いた顧客との関係性の作り方

ここまでで紹介したように、企業はそれぞれの特性を活かしながら顧客との関係性を構築していきます。では、一般的にはどのような手順で顧客との関係性を構築することができるのでしょうか。エンゲージメントマーケティングにおける顧客との関係性の構築方法を4つ紹介していきます。一般的な方法を知り、自社企業がどの部分に特に注力すべきかを考えてみてください。

カスタマージャーニーマップを作成する

顧客との関係性を構築するためには、まず顧客がどのように行動するかを知らなければなりません。自社が抱えている顧客がどのようなニーズを持ち、どのようなきっかけがあれば直接的な消費行動を始めるのかを知るためにもカスタマージャーニーマップを作成してみるようにしましょう。

カスタマージャーニーマップとは、その名の通り顧客が商品やサービスを利用するまでのプロセスを旅になぞらえて可視化したものになります。たとえば高級レストランを利用する顧客の場合、「レストランの存在を知り、他のレストランと比較してから一つのレストランに決める」行動から始まり、「レストランの予約方法を知る」、「レストランの予約をする」、「当日のレストラン以外の行動を決める」、「実際にレストランに出向き料理を体験する」というジャーニーマップを作成することができます。

企業としては単に「顧客が消費行動を行った」というだけの結果しか得られませんが、消費者として商品やサービスを利用する場合には上記の一連の行動の中に「テレビや雑誌の広告で印象を受ける」や「知人からの口コミでおすすめの店舗を知る」や「口コミサイトを確認して、自分が求めているサービスを受けられるかチェックする」という様々な要素を経てから予約に進みますし、実際に予約を済ませた後も「電話で予約したのであれば、その時の対応は満足度の高いものであったか」、「予約サイトを利用した場合は利用者目線で使いやすい予約サイトだったか」、「当日のレストランで受けた接客や料理の質は価格に見合うものであったか」という評価基準が発生してきます。さらに、レストランにもよりますが高級レストランの場合はアフターサービスとして「ダイレクトメールによる記念日プランの紹介」や「アンケートによる顧客満足度の調査」などの行動も入ってくるでしょう。それに対してプランが魅力的なものなのか、満足度調査の内容が分かりやすいものであるかも消費者は無意識のうちにチェックしています。

このカスタマージャーニーマップを構成する要素の満足度が高ければ高いほど、顧客エンゲージメントは高まります。一方で「口コミの評価は良かったが、実際の店舗では接客態度が悪く料理の味を楽しむ余裕がなかった」などカスタマージャーニーマップの中で消費者が不満に思う点が一つでもあればエンゲージメントは大きく下落してしまうでしょう。

企業としては、単に一度だけ利用しに来た消費者が定期的に利用してくれる顧客となり、さらに顧客自らが積極的に企業を選んで周りの人にも口コミを広げてくれるような優良顧客となるようにエンゲージメントを高めていかなければなりません。そのために、先ほどロペピクニックの事例で紹介したように顧客はどの部分でエンゲージメントを高めているのか、あるいはどの部分によってエンゲージメントが落ちてしまっているのかを顧客目線で知る必要があるのです。

ユーザーごとに最適なタイミングを見極める

企業としては顧客をリピーターにするために、アプリなどを使って顧客に対してキャンペーンやクーポンを配信することもあるでしょう。しかしながら、全ての顧客が同じタイミングで同じ情報を必要とするわけではありません。分かりやすい例を挙げれば、人によって誕生月は違うので誕生日特典のメルマガを一人の顧客に毎月送信しても意味がないことは自明でしょう。多数の顧客を抱えている企業であっても、エンゲージメントを上げるためにはユーザーごとに最適なタイミングを見極めて情報を発信しなければなりません。

特に現代は、企業側が発信する情報以外にもユーザーが興味を持った情報は自発的に集めることが可能な時代です。そういった情報過多の時代において、価値のない情報を日々発信しても読まれないだけではなく「面倒な企業」だと思われて一気にエンゲージメントが下がり顧客に見捨てられてしまうリスクがあります。

ユーザーの最適なタイミングを見極める方法としては、アプリのリリースが最も手軽で最適な情報を得ることができるでしょう。アプリを顧客にインストールしてもらうことで、顧客がどの程度の頻度で商品やサービスを利用しているのかという情報はもちろん、何時頃にアプリを開くのか、どういった場面でアプリによる情報収集を行うのかも知ることができます。

また、アプリを定期的に見る顧客とめったにアプリを開かない顧客に対しては情報提供の手段を変えることも重要です。前者の顧客に対してはアプリ内のお知らせに記載するだけで顧客が自発的に情報を得てくれるので、顧客に「自分は自発的にこの企業の情報を知りたいと思っている」という意識を与えることも可能です。しかし後者のようにアプリをめったに開かない顧客に対しては、アプリのプッシュ通知やメールマガジンなどの見てもらう可能性が高い情報発信の方が効果を発揮するケースも少なくはありません。

顧客がどのように行動し、企業に対して何を求めているのかを細かにセグメント化して顧客を把握することが企業には求められています。必ずしもアプリをリリースする必要はありませんが、顧客の消費に繋がらない行動も把握する方法を考える必要があるでしょう。

顧客のアクションを簡単にする

先ほど触れたように、顧客は情報過多の時代を生きています。その中で、一つの企業に対して割ける時間は一日の中に数分も持っていない顧客の方が多いでしょう。すなわち企業から一方的に情報提供するだけではなく、顧客が何を考えているのかを知る双方向のコミュニケーションがしたいのであれば、顧客が簡単にアクションを取れる環境を構築する必要があります。

たとえばTwitterやInstagramなどに新商品やキャンペーンの情報を投稿することで、若年層は公式ホームページを閲覧しなくても簡単に情報を得ることができます。さらにSNSの場合は最初から双方向のコミュニケーションという前提がユーザーにもあるため、企業が意図しなくても「今度の商品は期待できる」や「広告の段階では正直それほど魅力を感じない」など、消費者の生の声をダイレクトに得られる可能性も高くなります。

ただし、SNSによるアクションの簡略化は非常に有効な手段ではありますが万能な手段ではありません。たとえば顧客の年齢層が50代以上の場合にはSNSをチェックしている人はほとんどいません。そのため、どんなに簡単にリアクションができるツールを構築しても、そもそも存在の認知すらされない場合もあるでしょう。顧客の年齢層や活動している地域によっては、ザッポスのようにコールセンターを設置する方が有益な場合もあります。自社が抱える顧客の行動特性を知り、最適な手段を選ぶようにしましょう。

店頭での接客も意識する

オンラインショップの台頭によって、以前よりも実店舗の唯一無二性は失われています。しかしながら、それでも全ての顧客がオンラインショップを積極的に活用するわけではありません。若年層であっても購入する商品を決めるまではSNSや口コミサイトで情報収集をするものの、実際に購入するのは実店舗まで出向くという人も少なくはありません。また、そもそもカフェのように店頭に出向かなければ商品やサービスを享受できない業界も少なくはないでしょう。

そのため、必然的に店頭での接客も顧客エンゲージメントと密接な関わりを持っています。スターバックスが同じ価格帯のカフェの中では店員の知識や接客対応が優れているという評価を受けているように、店頭での接客が良くないとすぐに顧客エンゲージメントが大幅に落ちて、顧客は他の店舗のファンになってしまうでしょう。

カスタマージャーニーマップによって顧客の行動を知り、ユーザーごとに最適なタイミングで情報提供して企業への期待を高め、アプリやSNSを使って顧客のアクションを簡単にして生の声を知った後は、実店舗に来た顧客に対するサービスの質を良くすることによって顧客エンゲージメントを高めることが非常に重要です。多くの企業の場合、実店舗のスタッフは教育の行き届いている社員だけではなくフリーターや大学生・高校生のアルバイトを雇用しているでしょう。しかし、そうしたスタッフの立場の違いは消費者には関係ないこととなってしまいます。スタッフとして店舗に立つ以上、社員であってもアルバイトであっても一定の品質の接客を提供することによって顧客エンゲージメントを高めることができるような社内の雰囲気を作ることが必要でしょう。必要に応じて本社の社員が実店舗に出向いて、接客姿勢を評価するなどの行動も重要性が高いとしてよく知られています。

エンゲージメントマーケティングに期待できる効果とは

エンゲージメントマーケティングによって顧客との関係性を構築する方法は、既に紹介しているように一つだけに限定されているわけではありません。自社の企業特性に合ったやり方によって自由に顧客との関係性を強固なものにすることは可能です。では、そのように強固な関係性を築いた顧客に期待できる行動にはどのようなものがあるのでしょうか。エンゲージメントマーケティングによって優良顧客に成長した顧客の取りがちな行動と、それによる効果を2つ解説します。

顧客の自発的な行動

エンゲージメントマーケティングが成功すると、顧客は「このジャンルなら、この企業のものを買っておけば間違いない」という心理を持つようになります。そのため競合他社が自社より少し魅力的な商品やサービスを上市した程度では簡単に顧客を競合他社に取られてしまうことはありません。顧客は自発的に自分のエンゲージメントが高い企業の情報を集め、その企業に対してベネフィットをもたらしてくれるのです。

そもそも情報が多い現代において、特定の企業に関する情報を集めるということは競合他社に対して疎くなることも珍しくはありません。女性が好きなブランドの口紅の発売はカラーバリエーションに関してはとても詳しくても、興味がなく使う気もないブランドの口紅は名前すら知らないというケースもこれにあたります。さらに顧客は、自分の好きな企業に対しては非常に強い愛着を持つことも珍しくはありません。良い商品やサービスを利用できた時に、そのことを企業に対してメールフォームなどからしっかり伝えてくれるでしょう。あるいは、残念なことがあった場合にも建設的な意見として企業に伝え改善を促してくれることもあります。

こうした顧客の意見は、TwitterやInstagramなどへの投稿に対する一般ユーザーのリアクションとは情報の精度が異なります。たまたま投稿を見て感想を書くだけの一般ユーザーに対し、エンゲージメントの高い顧客は企業の今後も見据えた非常に価値のある感想をくれることも珍しくはありません。企業の内部にいては得られない情報を、特にコストを払わなくても顧客が自発的に発信してくれるということは企業にとって単なるモチベーション以上の意義を持つでしょう。

SNSによる拡散

さらに現代の顧客は、企業から商品やサービスの恩恵を受けるだけの存在ではありません。企業からの情報を受け取るだけではなく、自分自身がTwitterやInstagramといったSNSで発信することができる発信者でもあるのです。もちろん企業から受けた好ましくない対応なども拡散力が高いため企業としてはリスクとしてとらえていることもあるでしょう。しかしながら、エンゲージメントマーケティングによって顧客エンゲージメントが高まり優良顧客となった顧客は、基本的に自分が応援する企業の良い面を発信し、新商品や新サービスを自分のフォロワーにも使ってもらおうとする行動に出ます。

そこに有名なインフルエンサーほどの効果はなくても、一人の顧客が発信したものを複数名が見るというだけで企業としては自動的に知名度が上がる恩恵を受けられるようになります。こうした現象は今までにも口コミによって見られていましたが、近所の交友関係にしか効果がなかったり、口コミサイトなどの匿名性の高いサイトによる口コミは信憑性がなかったりするなど、企業が重要視するほどの拡散力はありませんでした。

しかし、現在のFacebookのように実名での発信であれば今までの近所の交友関係内での口コミに比べて広い範囲の消費者に影響を与えることができますし、TwitterやInstagramを匿名で利用している場合でも普段から付き合いのあるユーザー同士の中であれば実名で発信しているのと同じくらいの信憑性の高い情報だと認識されることも珍しいケースではありません。企業にとって、芸能人やインフルエンサーに対するように特別な対価を払わなくても好ましい情報が優良顧客によって拡散される恩恵は、計り知れないものになるでしょう。

エンゲージメントマーケティングでしっかり顧客を取り込もう

現代はマスマーケティングの時代とは違い、消費者のニーズや価値観も多様化しています。そのため新たな顧客を獲得する難易度は非常に高く、豊富な競争力を持つ企業であってもなかなか競合他社から顧客を奪うことはできないでしょう。そうした状況下だからこそ、企業は現在抱えている既存の顧客のエンゲージメントを高めて関係性を強固なものにすることが非常に重要になってきます。

顧客のエンゲージメントを高める方法は複数個ありますが、ここで紹介したような実店舗の接客の質を高めたり顧客の求める情報を求めるタイミングで発信する以外にも、顧客が親しみを持てる芸能人やインフルエンサーを起用して身近な企業であることを印象付ける方法も非常に有効です。特に若年層の顧客に対しては、インフルエンサーを起用することで格段にエンゲージメントを高めることも決して難しい話ではありません。

顧客のエンゲージメントを高めるためにインフルエンサーを活用するのであれば、起用するインフルエンサーの選定や起用方法に関して専門家の意見を取り入れることが重要です。ターゲットに合わせたインフルエンサーを起用できるかできないかは、顧客のエンゲージメントの高まりに大きな影響を与えるでしょう。ぜひ「コラボマーケティング」などの手を借り顧客のエンゲージメントを高め、顧客を優良顧客へと育て上げましょう。

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