ターゲットマーケティングの成功事例5つとマスマーケティングとの違い

ターゲットマーケティングに成功する企業が市場を制する

マーケティング戦略はバズマーケティングやコミュニティマーケティング、インフルエンサーマーケティングなど色々な戦略が存在しています。しかしながら、その中でも特に現代の消費者の価値観やニーズが多様化している市場においては、ターゲットマーケティングが最も適したマーケティング戦略の一つであると言われています。

現代は消費者のニーズも多様化していて、一企業がそれらに全て対応しようとしても全て中途半端な結果に終わってしまう恐れがあります。ブランド力が高く競争力も十二分にある企業は多くの消費者の需要を満たして顧客を獲得することでますます成長していくことが可能ですが、そういったことができない企業においてはターゲットマーケティングで戦略的に市場で生き残る方法を模索していかなければなりません。

ターゲットマーケティングとはどのようなマーケティング戦略なのかはもちろん、ターゲットマーケティングが可能にしてくれることが実際の成功事例、そしてマーケティング戦略を設計する際のステップを順を追って説明していきます。

ターゲットマーケティングとは

ターゲットマーケティングの活用方法を知る前に、まずはターゲットマーケティングについて正しい理解をする必要があります。まずはターゲットマーケティングの意味や混同されがちなマスマーケティングとの違いを知りましょう。その後、ターゲットマーケティングを活用する上で押さえておきたいSTPマーケティングについて知り、ターゲットマーケティングのマーケティング戦略における位置づけを把握していきましょう。

ターゲットマーケティングの意味

ターゲットマーケティングとは、市場を細分化してその中の特定の層にターゲットをあらかじめ絞ることで効率的なマーケティングをしていくマーケティング戦略です。市場の分析や市場細分化はターゲットマーケティングに限らずどのマーケティング手法においても必須なものですが、ターゲットマーケティングの場合はその市場細分の段階から既に顧客の選定が始まっているため、他のマーケティング手法よりも、より慎重で精密な市場細分化が求められます。

ターゲットとする層は「10代の女性」など1つの絞る必要はなく、「10代の女性」、「20代の女性」など複数の層をターゲットに据えても問題はありません。ただし、他のマーケティング手法においてはある程度の新商品やサービスの構想がある上でターゲットを選定してからその構想を微調整していくケースも多い中で、ターゲットマーケティングにおいてはターゲットを確定させてから自社の商品やサービスをそのターゲットが持っている特有の需要を満たせるように構築していきます。

そのため、多くの層をターゲットに据えるマーケティング手法の場合はSNSやインフルエンサーの力によって当初は想定していなかった層に対しても商品やサービスが広がっていくケースもありますが、ターゲットマーケティングの場合はそういった現象はほぼ起きません。ターゲットした層の需要を本質的に満たしていれば大きな売上を記録するものの、少しでもズレている場合はターゲットにした層はもちろんその他の層にも受け入れられることはないので大きく失敗してしまうリスクもあります。

マスマーケティングとの違い

こうしたターゲットを確定するターゲットマーケティングの手法は、しばしばマスマーケティングと混同されることもあります。では、ターゲットマーケティングとマスマーケティングにはどのような違いがあるのでしょうか。具体的な事例をあげながら両者の違いを見ていきましょう。

ターゲットマーケティングは特定の層の需要を確実に満たす商品やサービスを販売することで、売上を伸ばすことを目的とするマーケティング手法です。これはたとえば「10代の女子中学生や女子高生の間で流行しそうな通学鞄を販売する」ことがターゲットマーケティングにおける実際の事例です。10代の女子中学生や女子高生の間で流行しそうな通学鞄は、多くの場合同年代であっても男子学生からは敬遠されるデザインになっています。また、同じ性別で年齢が近い場合はターゲット以外の層にも流行が広がることはありますが、この具体例における通学鞄の場合はいくら年齢が近くても女子中学生や女子高生が好むものを女子大学生が愛用することは考えづらいですし、社会人であればなおさら使うことはないでしょう。すなわち、この例においてはターゲットマーケティングが想定しているターゲットは「10代の女子中学生と女子高校生」であり、それ以外の男子学生や20代の女性といった層に関しては企業側が市場細分化の時点で切り捨てていると言い換えることもできます。

では、マスマーケティングの場合はどうでしょうか。マスマーケティングとはそもそも、現代のように消費者のニーズや好みが細分化する以前の時代に生まれたマーケティング手法です。マスマーケティングが生まれたのは第二次世界大戦後から1970年代にかけての高度経済成長期の時代であり、その時代の日本は「大量生産・大量消費」が当然であるという考え方を持っていました。すなわちこうした状況下においては、企業がそれほど工夫をしなくても普遍的に使用される商品やサービスを販売すれば、特定の層に対する効果的なプロモーションを行わなくても自動的に売上が上がっていきました。つまりマスマーケティングとはターゲットを絞らず全ての消費者を対象に、大量生産を行いテレビCMなどを用いた大量プロモーションを経て、大量消費を引き起こそうとするマーケティング戦略です。

特定の層に対してターゲットを絞り込んでプロモーション活動においても特定の層に届くように様々なプロモーション手段を駆使するターゲットマーケティングに対し、全ての消費者を対象にしているマスマーケティングは正反対のマーケティング手法だと言えるでしょう。

たとえば先ほどの通学鞄の具体例を適用するのであれば、全員に売れるものを作るのは難しいと判断して「10代の女子中学生と女子高校生」に対する売上だけを目標にして行動するのがターゲットマーケティングです。しかしマスマーケティングの場合は「ユニセックスな見た目で、老若男女問わず使いやすい鞄」を売り出すことになります。広告に関しても、ターゲットマーケティングであればインフルエンサーなどを起用して若年層に刺さる広告だけを打ち出すので40代以上の層は広告はもちろん商品の存在すら知らないケースも珍しくはありませんが、マスマーケティングの場合は全ての消費者が対象となるので全ての消費者に届けるようにSNSだけではなくテレビや雑誌、新聞などの広告も駆使しながら消費者に届くようにします。

こうした全ての市場を対象にするマスマーケティングは、高度経済成長期に生まれたこともあり現在では時代遅れのマーケティング手法だと揶揄されることもあります。しかしながら今回の事例のように特定の商品であれば確かに効果を発揮しづらいマーケティング手法であることは否めないものの、食品や旅行といったそもそも多くの消費者の関心を集めやすいものであればターゲットマーケティングよりもマスマーケティングの方が適している場合もあります。市場を細分化した際の状況や想定されるターゲット層の量に応じて両者を使い分けていくと良いでしょう。

STPマーケティングとは

ターゲットマーケティングを学ぶと「STPマーケティング」という言葉を目にすることがあるでしょう。このSTPマーケティングとは「Segmentation(セグメント化)」、「Targeting(ターゲット選定)」、「Positioning(自社企業の魅力のアピール)」の頭文字を取った細分化手法であり、ターゲットマーケティングの具体的なプロセスを可視化したものです。

市場を様々な角度から分析し、市場調査の上でユーザー層と購買層がどのような人たちなのか、それぞれどのくらいの人数がいるのかを調査していきます。ここでユーザー層と購買層が分かれているのは、たとえば幼児向けのオモチャのような商品は実際に使う幼児ではなくその親世代や祖父母世代が購入者となります。このようにユーザー層と購買層が分かれている市場の場合は、ユーザー層の興味を惹けるような広告を出すのはもちろん、実際に購入するかどうかを決定する権利を持つ購買層に納得感を与えるような広告にしなければなりません。セグメント化の際に、ここを見落としてしまうとどんなにユーザー層に対して訴求力が高くても購買実績に結び付かない恐れがあるので注意しましょう。

セグメント化を終えた後は、その次に自社が競合他社に対して優位な立ち位置を取れるセグメントを選定しなければなりません。ターゲットとしたい層がどの程度の資金力を持っているのか、そこには競合他社が存在していないかを分析しながら、より深くターゲットの購買行動やニーズを分析していきます。このターゲット選定の段階で、ターゲットとすることを決定した層に対して商品の魅力を最大限まで引き上げるのはもちろん、最も効果を発揮させるようなプロモーション方法などの方向性も決めていく必要があります。

最後に必要な自社企業の魅力のアピールは、ターゲットとした層に対して自社がどの程度のベネフィットを供給することができるかを客観的に分析しながら自らのポジションを確立していきます。商品やサービスの価値はもちろん、それを消費者が手に入れるために要する経済的コストや時間的なコストを考慮しつつ、それでも商品やサービスを利用したいと消費者に思わせるためにはどのような戦略が必要かを考える必要があります。ここで重要なのは、この段階においてはあくまで消費者と自社企業の関係性を考えることに注力すべきという点です。ポジショニングというと競合他社との差別化を想像する人も多いですが、STPマーケティングにおいてはターゲットを選定する段階で競合他社とは違ったターゲットを選定していることも少なくないため、ポジショニングにおいては既に競合他社の存在を考慮することはそれほど重要ではありません。もちろん、既に参入している先発の競合他社に加えて今後新規参入してくるかもしれない競合他社を想定して競争力を確保しておくことは重要ですが、あくまでもそれはオマケであって基本的には消費者に対する自社の立ち位置をどうすべきかという点に絞って考えるようにしましょう。

マーケティング戦略における位置づけ

ターゲットマーケティングは、マーケティング戦略全体においては中流に位置しています。マーケティング戦略とは最初に外部環境や経済情勢などを含めた外部環境の分析を行い、次に市場の細分化とターゲティングをしてからポジションを決め、最後に商品自体の価格やプロモーション方法、消費者の利便性などを考慮するマーケティング・ミックスの考え方を経て上市することになります。

この一連の動きの中で、ターゲットマーケティングは市場の細分化とターゲティングの部分に位置しています。特に市場の細分化においては、この部分で誤ってしまうとそもそもターゲットとして想定している層が存在しなくなってしまう恐れがあります。自社の今までの販売動向だけではなく競合他社の新商品の動向なども見ながら慎重に市場を細分化していくようにしましょう。

ターゲットマーケティングが可能にすること

消費者のニーズが多様化する現代において、食品などの一部の商品を除いてマスマーケティングの手法をとることは非常に困難です。その点、消費者の母数が少なくなるため総合的な売上額はマスマーケティングより劣ってしまうものの、企業が意図した通りに売上を確保できるターゲットマーケティングは多くの市場の現実に即していると考えられます。では、そんなターゲットマーケティングはどのようなことを可能にしてくれるのでしょうか。ターゲットマーケティングのメリットを4つ紹介します。

顧客ニーズの理解

市場の細分化や顧客の分析はどのマーケティング戦略においても必須ですが、特定のターゲットに対して深く知る必要があるターゲットマーケティングはその他のマーケティング戦略よりも必然的に顧客ニーズの理解が深まります。ターゲットとして定める顧客以外のニーズを調べる労力を全てターゲット層の分析に注力させることができるため、より深く顧客のことを知ることができるでしょう。

ニーズはもちろん、消費行動などもターゲットマーケティングでは詳しく把握することができるようになります。こうして得た顧客の情報は、ターゲットマーケティングを進める上で役に立つのはもちろん、その他のマーケティング手法で売り出そうとしている商品やサービスの市場分析にも役立てることができるでしょう。

すなわち、色々な層に対するターゲットマーケティングを進めれば進めるほど顧客のニーズだけではなく自然と市場全体のニーズや行動特性、消費行動に対する情報が集まっていくのです。大半の企業においては一つの商品だけを売ることはないため、このようにターゲットマーケティングで収集した情報を他の商品やサービスの上市に役立てることによって当初想定していた以上の恩恵を受けることができるようになるでしょう。

競合他社への優位性の確保

潤沢な資本を持っていて競争力の高い企業の場合、基本的にはターゲットマーケティングではなくマスマーケティング、あるいは両者の間に位置するようなマーケティング戦略によって多くの顧客を確保して売上額や利益を確保しようとします。その企業と同じくらい競争力のを持つ企業であれば、そうした強者に対して市場分析の精度を上げたりプロモーション方法で差をつけることによって市場の勝者になることも不可能ではありません。しかし、残念ながらそれほどの競争力を持たない企業にとっては既に圧倒的な強者がいる市場で一位の座を奪うことはほぼ不可能です。

ただし、ターゲットマーケティングを活用する場合はその限りではありません。広い範囲の消費者に対して訴求力の高いマーケティング戦略をとっている強者の企業に対して、一部の消費者をターゲットに据えることで売上の総額では敵わなくても一部のジャンルにおいては競争力で劣る企業であっても競争に勝つことができるのです。

その点で、ターゲットマーケティングは「弱者の戦略」と呼ばれることもあります。全ての市場において勝利することができなくても、特定の市場で確実に一位を勝ち取ることができるのであれば、それは企業にとって決して悪いことではありません。競合他社に対して一度でも優位性を確保することができれば、そこから知名度が上がって違うターゲットに対してアプローチする力を持つことができるようになるかもしれません。そういった意味で、成功することによってほぼ確実に競合他社への優位性を確保できるのはターゲットマーケティングの強みだといえるでしょう。

コストの有効活用

企業にとって有限なコストを有効活用することは喫緊の課題です。その点、ターゲットマーケティングはコストの有効活用も可能にしてくれます。既に触れている通り、ターゲットマーケティングは全ての消費者に対して高い訴求力を発揮する必要はありません。特定の消費者、あるいはそのユーザーと購買層に対する訴求力のみ発揮できれば良いのです。

すなわち市場の全体的な調査や市場の細分化を終えた後は、ターゲットと定めた層に対する調査だけに専念することができます。マスマーケティングに代表されるような他のマーケティング手法でもある程度のターゲット層は選択肢、そこの調査は行います。しかしながら、ターゲットマーケティングとは違いその他のマーケティング手法の場合は、ターゲット層以外にも購買意欲を沸かせることはできるかもしれないと仮定して、その他の層の調査も行わなければなりません。

最初にターゲットを定めた後はその他の層を切り捨てるターゲットマーケティングと、最初にターゲットを定めるもののその他の層も念のため調査しなければならないその他のマーケティング戦略の違いはここに現れます。当然ながら、特定のターゲット層にのみ照準を絞るターゲットマーケティングの方が、時間的なコストも人的なコストも削減することができるでしょう。企業として重要な課題であるコスト削減を可能にするターゲットマーケティングが重宝されるのも当然の話であると言わざるを得ません。

競争の回避

競争力をあまり持たない企業であっても、一部の市場にターゲットを絞ることで大企業と対等以上に戦えるようになるのがターゲットマーケティングのメリットの一つです。しかしながら、ターゲットマーケティングの活用方法においてはそもそも競争自体を回避することで、市場を自らの独壇場にすることも不可能な話ではありません。

市場にもよりますが、市場を細分化してターゲットを選定している段階でその他の競合他社が未だにアプローチをしていないターゲット層を見つけることができる可能性もあります。そこに対してターゲットマーケティングを仕掛けることで、そのターゲット層は必然的に企業が販売している商品やサービスを選択せざるを得ない状況になるでしょう。さらに商品やサービスの質が高ければ高いほど、ターゲット層の満足度も高まるためその他の企業が入り込む余地を奪うことが可能です。

ターゲットマーケティングが可能にするのは、一部の市場における大企業への勝利だけではありません。市場の細分化の精度やアプローチ方法によっては独占市場を作ることすらも可能にしてくれるのです。

ターゲットマーケティングの成功事例5選

競争力を持たない企業にとっても市場で自らの存在感をアピールするチャンスを掴めるのがターゲットマーケティングのメリットです。では、実際にターゲットマーケティングを使った成功事例にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは成功事例を5つ紹介していきます。

無印良品

 

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【新生活2020】パイン材ローテーブル・折りたたみ式 – 節の表情をそのまま生かし、使うほどに味わいが深まるパイン材です。 簡単に組み立て、折りたたみができるので、使いたいときにさっと出して使わないときはコンパクトに収納できます。 – #無印良品 #MUJI #新生活 #新生活の準備 #つながる暮らし #インテリア #インテリア相談 #インテリアアドバイザー #interior #ひとり暮らし #一人暮らし #ひとり暮らしインテリア #一人暮らしインテリア #一人暮らし部屋 #ひとり暮らし部屋 #ローテーブル #折り畳み式 #パイン材

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現在ではショッピングセンターなどに併設されていることも多くファンの多い無印良品ですが、1980年の発足当時にはそれほど知名度を持たない企業でした。しかし、無印良品は発足当初から一貫して「わけあって、安い」というコンセプトのもと、シンプルなライフスタイルを追及する消費者をターゲットにしてマーケティング戦略を実行し続けています。

シンプルなライフスタイルを追及するためのブランドといえば、無印良品を始めとして現在では様々な店舗で購入することができます。しかし、無印良品が発足した当時はシンプルな商品はそれほどなく、むしろ「質は良くても見栄えが悪いため商品化には至らない」というケースも散見されていました。しかし無印良品は商品の見栄えだけではなく品質面も重視することで「品質が良くシンプルな商品を使いたい」という消費者に対するアプローチをすることに成功したのです。

すなわち、発足当時から無印良品は「派手な装飾品よりもシンプルな商品を使いたい」という消費者をターゲットに据えることで「シンプルな家具がほしいなら無印良品が最適」という意識を消費者に持たせることに成功したのです。無印良品はその後、現在まで順調に企業規模を拡大していますがシンプルな商品を売るという路線を崩すことなく経営を継続しているため、今では後発企業の参入が難しいという状況を作り出すことにも成功しています。

スタジオアリス

 

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【衣装情報は続きを読むから★】 ピンクのスーツをビシッと着こなして1歳バースデーの記念撮影✨ スタッフの動きに合わせてニコっと笑ってくれる姿がたまらなく可愛いです💗 —————————————– @saorin.ngn さま、素敵な動画をありがとうございました😊 —————————————– 【着用衣装】 ✔︎タキシード ✔︎80㎝ ✔︎1歳 【衣装ブランド】 ✔︎Rideo 【着用シーン例】 #バースデーフォト #端午の節句 . ※店舗によって取り扱いがない場合がございます。 詳しくは店舗にお問い合わせください #StudioAlice #写真は未来の宝もの #フォトスタジオ #キッズフォト #ベビーフォト #写真スタジオ #子供写真 #子供写真館 #ベビスタグラム #1歳男の子 #誕生日フォト #バースデー

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「100日記念日や子どもの入園式の時には記念写真を撮る」ということは今では恒例の行事になっていますが、実はこの意識を作り上げたのもスタジオアリスのターゲットマーケティングが成功したおかげだと言われています。スタジオアリスが現在のように規模を拡大する以前は「フォトスタジオ」という概念はなく、家族写真を撮る場所といえば「町の写真館」というイメージしかありませんでした。もちろん写真館であってもプロのカメラマンが撮影してくれるためクオリティの高い写真を撮ることはできますが、「写真館」という言葉からお見合い写真を撮る格式高く古臭い場所というイメージを連想する消費者も少なくなく、お世辞にも売上はそれほど高いとは言えませんでした。

スタジオアリスも元々は写真の現像などを主に行う企業でしたが、1992年に「こども写真館」をオープンしたことを契機に子どもを持つ家族を中心に急速に知名度を上げシェアを拡大し、現在では少子化時代であるものの世界にも進出している有名な企業へと成長しています。

これは「畏まった写真を厳かに撮る場所」というイメージを持っていた消費者の中に「子どもの記念日をプロの手で綺麗に残す」という新たな概念を植え付けることによって成功したターゲットマーケティングの事例です。「子どもの写真を綺麗に残したい」や「子どもと一緒の家族写真を撮りたい」という消費者にターゲティングすることで、競合他社がいない市場で成功することを可能にしました。

1992年当時は現在のようにセルフタイマー機能がついたカメラも少なく、当然ながらスマホや自撮り棒もないため家族写真を撮る際は誰かがカメラ係にならざるを得ませんでした。しかし、単なる家族写真を撮るために出向くには写真館の敷居は高いというイメージがあったため、多くの場合は家族写真を撮ることを諦めるしかありませんでした。その意識が「こども写真館」の登場で大きく変わったのです。「子どもと一緒に写真に写りたい」という親世代や祖父母世代をターゲットとした成功事例だと言えるでしょう。

資生堂「シーブリーズ」


資生堂が販売しているシーブリーズは、最近ではテレビの広告にも若い世代の俳優や女優を起用することも多く、爽やかなイメージを持っている商品として広く認知されています。しかし実は、1969年に日本で販売された時点でのシーブリーズの主なターゲット層は「20代~30代の海でサーフィンを楽しむ男性」でした。この状態でも多数の支持を得て順調に売上を伸ばしていましたが、「休日は海に行くのが流行」という外部環境が変化してシーブリーズを使う男性が劇的に減少したことに伴ってシーブリーズの売上も落ちていました。

そこで資生堂は今までの20代~30代の男性からターゲットを変更し、体育や部活動の後の体臭を気にする高校生を主なターゲット層に据えました。特に美容に対する意識が芽生える年代の女子高生をターゲットとすることでシーブリーズの認知度は一気に高まる爆発的な売上を記録するようになりました。

海で使う男性には「ほてった肌を冷やす」という効果が受けていたシーブリーズですが、女子高生に対して「汗の臭いを気にせず友達と接することができる」というデオドラント効果を前面に押し出したプロモーション活動をすることで、シーブリーズの売上は低迷期の8倍以上に回復したと言われています。このようにターゲットマーケティングは今から上市させる商品やサービスだけではなく、既に上市して売上が低迷している商品やサービスに対しても適用させることができることは覚えておくべきでしょう。

スターバックス


社会人はもちろん高校生や中学生も時には足を踏み入れるスターバックスですが、実はそもそものターゲット層は都市に勤務していて給料も比較的高めのビジネスマンでした。プロが入れたコーヒーを落ち着いた環境で飲みながらゆっくり情報収集や考え事をしたいビジネスマンにとって、スターバックスは他のフードコートなどのコーヒーに比べると単価は高いものの、クオリティも高く需要にマッチしているものでした。

スターバックスのコーヒーの単価は高いと言われていますが、実はスターバックスがここまで台頭する以前はフードコートよりも落ち着ける場所というとホテルのラウンジなどで提供されるコーヒーが主流だったため、フードコートの100円前後のコーヒーを避けるのであればホテルのラウンジで1,000円程度のコーヒーを飲まなければならないという消費者にとっては難しい決断を迫られる状況でした。そこに500円~600円という価格帯でコーヒーを提供することにより、スターバックスは「フードコートは避けたいがホテルのラウンジを頻繁に使うのは厳しい」というビジネスマンをターゲットにすることに成功したのです。

そして、その後はビジネスマンの中でもコーヒーを好まない層に対してフラペチーノなどの商品の提供バリエーションを増やしたり、スターバックスを気に入ったビジネスマンが休日に家族を伴って来店することにより、現在のように若年層にも利用されるカフェへと徐々に変化していったのです。

ターゲットマーケティングは既に紹介した無印良品のようにターゲットを変えずに経営方針を維持することで独占的な市場を形成することも可能ですが、このスターバックスのように最初のターゲット層へのマーケティング戦略に成功して競争力を得ることができた後は新たなターゲット層にも手を広げていくことも可能です。競合他社の状況や自社の資本力、今後の市場の成長性なども踏まえて総合的に経営方針を決定していくと良いでしょう。

QBハウス

 

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3月6日、エキシティ広島店オープン! #エキシティ広島 #QBハウス

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QBハウスもスターバックスと同じようにビジネスマンをターゲットに据えて成功した事例の一つです。今では広い駐車場を持つショッピングセンターや駅の近くなど、忙しいビジネスマンでも立ち寄りやすい場所に店舗を構えているQBハウスですが、実はQBハウスが台頭するまでは「理髪店は単価が高くてもクオリティの高さで勝負するのが一般的」という構造が成立していました。スタジオアリスの事例で写真館に敷居が高いイメージがあったように、理髪店に関しても「時間とお金をかけて綺麗になる場所」というイメージが強く、ビジネスマンが利用するには貴重な休日を利用して行かなければならない場所でした。

しかし、特に男性においては時間とお金をかけてクオリティの高い接客をしてもらうよりも、少しクオリティは落ちても短時間で安価に髪を整えたいという需要を持っている人も少なくはありませんでした。そこに着目したQBハウスは、「10分1,000円」をキャッチコピーに忙しいビジネスマンでも休日を犠牲にすることなく、少しの隙間時間での散髪を可能にしたのです。

このQBハウスによるターゲットマーケティングは成功をおさめ、現在ではシンガポールや香港、台湾といった海外も含めて600店舗以上を運営する企業に成長しています。さらに、当初の「忙しいビジネスマン」というターゲットの他にも「長時間美容院にいることが苦手な子ども」や「子育ての合間に時間を取って自分のための美容院に行けない母親」も入りやすいような環境を整えることで、当初のターゲット以外にも順調に顧客を増やしています。

マーケティング戦略を設計する際の5つのステップ

ここまでで紹介したように、ターゲットマーケティングの活用に成功することで、現在では知名度の低く選ばれる機会の少ない企業でも一気に市場一位を取ることも決して不可能ではありません。さらにスターバックスのようやQBハウスのように当初のターゲット以外にもターゲットを広げていくことで、さらに企業としての競争力を確保して新たな市場に対するアプローチをすることも可能です。では、ターゲットマーケティングを設計するにはどうすれば良いのでしょうか。5つのステップに分けて解説していきます。

①ターゲットを絞る

ターゲットマーケティングは、まず当然ながらターゲットを絞る必要があります。ターゲットを絞らないと最適な商品やサービスを開発することもできませんし、ターゲットのニーズも把握することができません。まずは市場を分析し細分化した後、どのターゲットに対してアプローチしていくのかを明確にしましょう。

ターゲットをしっかり絞ることで、その他のターゲットに対するコストを削減することが可能です。効率的にターゲットマーケティングを実行に移すためにも、ターゲットを絞っていくようにしましょう。なお、ここでのターゲットの選定はできる限り細かく行うことが大切です。「ビジネスマン」のように母集団の大きなターゲットを設定しても、ビジネスマンにも色々な背景があるためアプローチ方法を決めることができません。「都市部で忙しく働くビジネスマン」をターゲットに据えるか「賃金が低く、家での居場所もないビジネスマン」をターゲットに据えるかで、当然ながらアプローチ方法は大きく異なります。年齢や性別に限らず、居住地や既婚か未婚、ライフスタイルに至るまで可能な限り細かな設定をしてターゲットを絞りましょう。

②ターゲットを理解する

ターゲットの選定が終わったら、次はそのターゲットを理解するようにしましょう。ターゲットがどういったものを求めているのかというニーズはもちろん、消費行動に移る前にはどのような情報収集をして、どんな契機があれば「ほしい」という漠然な気持ちが「買おう」という行動に移るのかを知る必要があります。

ターゲットのニーズを理解してターゲットの行動特性を理解することにより、狙ったターゲットに対して意図した通りの消費行動を起こさせることも可能になります。単にターゲットが魅力的だと思うような商品やサービスを上市するだけでは売上に結び付かない可能性もあるので、実際にターゲットが買う決意をして実行するまで誘導できるようにターゲットを理解しましょう。

③一言のキャッチフレーズを作る


ターゲットに対して自社の知名度を上げたいと考えた時、キャッチフレーズはシンプルであるほど強力です。たとえば花王のエッセンシャルというシャンプーのテレビCMで「カワイイは作れる」というキャッチコピーが作られた時、シンプルかつ意味の分かりやすいキャッチコピーで知名度を飛躍的にあげることに成功しました。

これが仮に「シャンプーによって髪の毛を綺麗にすることによって自分に自信が持てるようになり、表情も明るくなります。そうするとメイクもファッションも楽しくなり、ますます女性は可愛くなっていくでしょう」というキャッチコピーだった場合、消費者に対して伝えたいことが何か分からなくなってしまいます。情報が多く取捨選択に疲れている現代の消費者をターゲットに据えているからこそ、分かりやすいキャッチコピーで商品の知名度アップに貢献しましょう。

④ベネフィットを強調する


分かりやすいキャッチコピーと同じくらいに必要なのが、ベネフィットを強調することです。消費者が商品やサービスを利用することによって、どのようなメリットがあるのかを分かりやすく伝えるようにしましょう。たとえばシオノギヘルスケアから発売されているセデスでは「痛くなったらすぐセデス」というキャッチコピーで「痛みをすぐに取り除くことができる」というベネフィットを消費者に対して分かりやすく訴求しています。

これも花王のエッセンシャルの事例と同じように「頭痛や生理痛を感じた時、アセトアミノフェンなどが配合されたセデスを服用することで痛みを和らげることが可能です」のように商品の特徴を紹介してしまっては、消費者に伝えたいことがぼやけてしまいます。企業の内部で商品開発をしていると忘れがちですが、消費者は専門的な知識を持たない一般人である場合がほとんどです。商品の特徴を長々と説明するのではなく、ベネフィットを端的に強調してターゲットの興味を惹くようにしましょう。

⑤競合相手を明確化する

ターゲットマーケティングにおいては競合相手を避けることも可能ですが、それはあくまで理想論であり必ずしも競合相手のない市場を見つけ出せるとは限りません。競合相手のいる場所でターゲットマーケティングを活用しなければならなくなった時、ターゲットとなる消費者ばかりを意識していると競合他社の後追いになってしまい思ったように顧客を獲得できない恐れもあります。

市場調査や市場細分化の段階で競合相手を避けられないことが分かったら、消費者の分析と併せて競合相手の分析も進め競合相手よりも自社のベネフィットが消費者に分かりやすく伝わるようなポジションを確立しましょう。

ターゲットマーケティングへの理解を深めてマーケティング戦略に役立てよう

確実に売上を伸ばせるようなターゲットの選定に苦労するターゲットマーケティングですが、しっかり理解して活用することで競争力の乏しい企業であっても大企業と対等以上に渡り合うことも不可能ではありません。今までのマーケティング戦略が思ったような効果を発揮していない企業こそ、ターゲットマーケティングへの理解を深めてマーケティング戦略に応用していくようにしましょう。

また、既に紹介したように10代~30代などの若年層をターゲットとするターゲットマーケティングには、プロモーション活動にインフルエンサーを起用することも非常に効果的です。インフルエンサーを起用することで、芸能人を起用するよりもさらにコストを抑えながら知名度を上げることができるでしょう。もしターゲットマーケティングとインフルエンサ―マーケティングを併用したいのであれば、「コラボマーケティング」といった専門家に相談してみてください。ターゲットに最適なインフルエンサーの紹介だけではなく、起用方法の提案などマーケティングにおけるパートナーになってくれること間違いありません。

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