マーケティングにおけるインサイトとは?消費者のニーズを捉えたマーケティングの成功事例

マーケティングでは「インサイト」を考慮することが重要

マーケティング戦略には有名な4P理論を始めとして、最近話題になっているインフルエンサーマーケティングやコミュニティマーケティングなど色々な戦略があります。しかし、どの戦略においてもインサイトを把握することができなければ市場を制することは難しくなってしまいます。

マーケティング戦略を考える際に、インサイトを考慮することで消費者の需要に即した戦略の立案が可能になります。マーケティングにおけるインサイトの意味や実際の成功事例、インサイトを発見する際に重要となっていくポイントについて解説していきます。インサイトを考慮して効率的なマーケティング戦略を立案し、実行に移していきましょう。

マーケティングにおける「インサイト」とは

Instagramなどの分析ツールでも「インサイト」という言葉を耳にすることはあるでしょう。インフルエンサーマーケティングなど、SNSを使ったマーケティングを実施している企業においては、インサイトという文字を見ない日はないかもしれません。しかしながら、一方で正確な意味を把握しないままなんとなく「インサイトを重視する」や「インサイト分析が必要」のように使ってしまっているケースも少なくはないと言われています。まずは、マーケティングにおけるインサイトの正しい意味を把握しましょう。

インサイトとは

「インサイト(insight)」を直訳すると「洞察」という意味になります。しかし、当然ながらマーケティングにおけるインサイトはそのままの意味では通用しません。マーケティングにおけるインサイトとは、「購買意欲を刺激するツボ」のことを意味しています。

このインサイトを理解するためには、1920年にアメリカのローランド・ホールが提唱したAIDMAという概念を理解する必要があります。AIDMAとは「Attention(注意)」、「Interest(興味)」、「Desire(欲求)」、「Memory(記憶)」、「Action(行動)」の頭文字を取った言葉であり、広告や宣伝に対する消費者の心理的なプロセスを端的に表しています。すなわち消費者は、ある広告に対して注意を向けて興味を持ち、欲しいという気持ちを持って商品名が企業のことを記憶してから購買のための具体的な行動に移るという心理的なプロセスを経て消費行動を行います。

インサイトは、このAIDMAにおいて「Desire(欲求)」を「Action(行動)」に変化させるためのスイッチの役割を担っています。ただし、このインサイトは消費者本人が自覚しているわけではありません。消費者の「〇〇がほしい」や「〇〇をしたい」という欲求を聞いてから始めて企業が商品やサービスを開始するのでは、本当にインサイトを考慮したマーケティング戦略が実行できているとは言えません。インサイトを考慮した本来のマーケティングは、消費者が欲求を自覚する前に企業側が商品やサービスを提供していくことにあります。「ここの企業はいつも需要に対して満足する供給をしてくれる」を消費者に思わせるのではなく「ここの企業を使っていると、欲しいものが思いつかないくらいに満たされる」と思わせることこそが、インサイトを考慮したマーケティング戦略の成功例です。

インサイトの種類

インサイトの中でも「消費者インサイト」や「顧客インサイト」、「購入インサイト」など、それぞれ色々な表現方法が存在しています。しかし、実はそのどれもが同じ意味を持っているので別個に考える必要はありません。いずれにせよインサイトは基本的に、消費者が自覚していないためまだ表面化していない欲求のことを意味します。

企業として消費者のインサイトを分析して競合他社に先んじたマーケティング戦略を実行に移したい場合も、消費者インサイトや顧客インサイトといった言葉の違いに惑わされてはいけません。言葉の意味合いの違いに惑わされることなく、市場の分析や消費者の要望の中にさらに隠れているインサイトを見つけ出すようにしていきましょう。

ニーズ・潜在ニーズとの違い

インサイトを学んでいる時に陥りがちな失敗が、ニーズや潜在ニーズと混同してしまうという失敗です。確かに消費者の需要を満たすという意味ではインサイトもニーズも潜在ニーズも非常に近いものだと思えるのも無理はありません。しかしながら、それらには明確な違いが存在しています。インサイトとニーズ、潜在ニーズがどのように違うのかしっかり把握しておきましょう。

まず、ニーズとはインサイトとは違い既に顕在化しています。先ほどのAIDMAの例でいえば「Desire」にあたり、消費者は既に「〇〇がほしい」、「〇〇がしたい」という欲求を自覚してそれらを満たしてくれる商品やサービスを探しています。たとえばダイエットを例にしてみると、ニーズとは「痩せたい」という明確な願望です。もちろんマーケティングにおいては、この消費者の「痩せたい」という明確な願望を満たすために効率的に痩せられるダイエット食品を販売したり、食事制限などの付加価値もつけてくれるジムを立地の良い場所に開設するというのも非常に大切なことです。しかしながら、こうした顕在化しているニーズを満たしているだけでは結局は競合他社との戦いになってしまいます。

人口が100人いても、100人全員が「痩せたい」という気持ちを持っているとは限りません。そのうち、痩せることに興味がある30人の消費者を競合他社と奪い合うことしかできなくなってしまいます。ニーズを満たすことはもちろん大切なことですが、それだけでは消費者の流行や競合他社の努力によって自社企業の立ち位置が危ういものになってしまうリスクが高いことは自明でしょう。

では、潜在ニーズはどうでしょうか。マーケティング用語としてインサイトは潜在ニーズを言い換えられることも多々あります。たとえば先ほどのダイエットの例であれば、痩せたいという顕在化しているニーズの根底にある動機が潜在ニーズに当たります。具体的には「健康的になりたいから痩せたい」や「異性にモテる人間になってみたいから痩せたい」など、ニーズを持つ理由を潜在ニーズといっても良いでしょう。この潜在ニーズは消費者自身が自覚している場合もありますし、全く自覚がなく潜在ニーズを持っていて本人でもニーズにしか気付けていない場合もあります。

しかし本人の自覚の有無に関わらず、ニーズが発生している時点でそれは厳密的にはインサイトとは言えません。本人が自覚している顕在化しているニーズはもちろん、自覚のない潜在ニーズもインサイトとは言えないのです。インサイトは潜在ニーズよりももっと前の段階に存在しているものです。AIDMAの例でいえば「Desire」がニーズであることは既に紹介しましたが、そもそも広告に対して興味を持つ「Interest」や街を歩いていて店を見る「Attention」の時点が潜在ニーズだと分類することができます。

ダイエットの具体例を掘り下げるのであれば「痩せたい」というのがニーズ、「健康のために痩せたい」という欲求に対して「健康になりたい」という気持ちが潜在ニーズ、そして痩せてみて初めて「そういえば、自分は最近痩せたいと思っていたのかもしれない」と気付けるのがインサイトということになります。

もちろんダイエットに限らず、企業は常にこうした消費者のインサイトを満たすように動いていく必要があります。100人の人口の中でダイエットに関するニーズを持っている割合が3割の30人だとしても、もしかしたら残りの70人もダイエット以外の目的で商品やサービスを利用することによって自分がその状態にいることが心地良いと感じられるようになるかもしれません。「買いたいから買う」や「気になったから試してみる」ではなく「買ったり試してみたりした結果、自分の生活における満足度が向上したことによって満足感を得られる」ものを提供することこそが、消費者のインサイトを見抜いたマーケティング戦略なのです。

インサイトが注目される理由

そもそも企業は商品やサービスによって消費者に満足感を与えることで、売上や利益を伸ばしていくのが基本的なマーケティング戦略です。市場の大小に限らず、消費者の需要を満たすことができない商品やサービスは、どんなに安くて品質の良いものを提供しても売上が伸びることはないでしょう。しかし、それだけでは先ほど人口100人を例に挙げて説明したようにすぐに消費者が満足してしまいます。市場はそもそも有限のパイを奪い合うゲームや陣取りゲームに例えられますが、そこからも分かる通り消費者の需要を満たしているだけでは、競合他社との競争が続くだけです。良い商品やサービスを他の会社よりも早く提供することができれば圧倒的に優位な立場に立つことも可能ですが、消費者の流行に左右されたり競合他社の競争力に負けたりするリスクを否定することはできず、たとえどんな業界であっても業界一位が未来永劫保証されることはありません。

それに対して、消費者インサイトを満たすということはは当の本人である消費者さえも気付かないニーズ以前のものを満足させることが可能です。すなわち、今まではニーズや潜在ニーズを満たすことで需要に応える後発の立場に甘んじていた企業が、自ら消費者の需要を作り出していくことができるのです。ダイエットの例でいえば、100人の人口の中で30人しか需要がない市場で競合他社と競争していた企業が、インサイトを有効活用することによって30人規模ではなく100人全員から求められる企業になることも不可能ではありません。もちろん実際の市場は30人や100人といった小規模ではないことがほとんどですので、インサイトの重要性を理解できるでしょう。

現代では、最高級品やハイブランドの商品にこだわらなければそれなりのお金を出すことでそれなりの品質のものを買える時代になってします。そのため消費者も常に高いレベルの満足感を維持しているため、たとえ新商品が出てもiPhoneなどの人気商品を除いては、以前のファミリーコンピュータやゲームソフトの発売日のように前日以前から並ぶ長蛇の列ができることはほとんどありません。現在使っている商品が壊れて新しいものに買い替える場合でも、特に比較検討をすることもなく「特に不満はないから前と同じメーカーのものを買っておこう」という選択をする消費者も多いでしょう。選ばれるメーカーに明確な理由がないのと同時に選ばれなかったメーカーにも明確な理由はないため、企業としてはどういった方向性での努力をすれば売上を伸ばせるのか判断しづらい状況になってしまっています。

こうした状況を考えると、消費者の需要を後追いで満たしていくだけではなく消費者の需要を能動的に満たしていくことができるインサイトの重要性が分かるでしょう。競合他社に対して優位な立場に立てるだけではなく、こだわりのない消費者に対しては自社の知名度を上げて存在を認知させるだけで「最近、よく名前を聞く企業だからとりあえず使ってみよう」という気持ちにさせることも可能なのです。飽和した市場においても継続的な成長をしていく必要がある企業こそ、インサイトに注目してマーケティング戦略を立案し実行に移していくことの重要度が高くなります。

消費者のインサイトをとらえたマーケティングの成功事例7選

消費者のインサイトをとらえるマーケティングの重要性は既に説明した通りです。しかし企業としては、ニーズを満たすことはできても顕在化していない潜在ニーズを満たす商品やサービスの開発が難しい中で、さらに実際に商品やサービスを利用するまで気付けないインサイトをとらえるのは非常に困難だと考えてしまうことも無理はないでしょう。しかしながら、実際に消費者のインサイトを巧みにとらえて成功している企業は少なくありません。ここではインサイトをとらえて成功した7つの実際の事例を紹介していきます。紹介されている事例を読み、どうやってインサイトを分析すれば良いのかの参考にしてください。

Got milk?キャンペーン

 

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If you’re out here lookin’ like a snack, milk is the match for you❤️🥛 #valentinesday #gotmilk #milk #🥛 #onlinedating #lookinglikeasnack

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消費者インサイトをとらえた事例の中で最も有名なのが、1990年代初頭にアメリカ、カルフォルニア州の牛乳加工業者が行った「Got milk?キャンペーン」です。当時、カリフォルニア州では全体的に牛乳の消費量が落ち込んでいたため牛乳加工業者の売上が大きく減少していました。その打開策として、消費者の健康になりたいというニーズを刺激するために「牛乳には豊富なカルシウムが含まれる」や「牛乳は栄養満点の飲料」、「牛乳は健康だけではなく美容にも最適」というプロモーション活動を行いましたが、それらの情報は消費者にとっては既によく知られている事柄だったこともあり、なかなか売上アップという成果が得られることはありませんでした。

そこで業者は視点を変え、「そもそも牛乳を飲む人はなぜ牛乳を飲むのか」という消費者の行動の要因を探る実験を始めました。牛乳を日常的に飲んでいる人たちに協力を依頼し、一週間牛乳を飲むことを我慢してもらう実験です。この実験を始めてから一週間後に「どういう時に牛乳を飲みたいと感じたのか」という状況を報告してもらうことにより、消費者が牛乳を求める状況を明確にしようとしました。

そうすると、日常的に牛乳を飲んでいる人であっても牛乳のことを常に考えているわけではないということが判明しました。「牛乳を飲めない状況になって、飲みたいという気持ちを強く感じて牛乳のことを考えるようになった」や「甘いものを食べる時に牛乳を飲めないとイライラすることに気付いた」という、牛乳への需要が高まる具体的な瞬間がいつなのかを知ることができたのです。

この調査結果を元に、牛乳加工業者は消費者の牛乳に対するインサイトは「牛乳を飲みたくなる状況で初めて発揮される」という仮定を立てました。そこで今まではスーパーなどで牛乳売り場で目立つようなポップを展開していたにも関わらず、チョコレートやクッキー、シリアルといった牛乳と一緒に食べたいと感じる人が多い売り場に「Got milk?(ミルクはある?)」というポップを設置しました。

このキャンペーンの効果は絶大であり、今まで日常的に牛乳を飲んでいた人はもちろん牛乳に対する潜在的なニーズすら持っていなかった人たちも牛乳を購入することが日常的になりました。1993年11月に始まったGot milk?キャンペーンですが、翌年の1994年にはカリフォルニア州全体の牛乳消費量が前年比+1.8%になっています。また、Got milk?キャンペーンを行った牛乳加工業者自体の売上は1億ドル増の約5.3%増えたと言われており、調査に基づくインサイトをとらえるマーケティング戦略の成功事例として広く知られています。

日清食品


日清食品の主力製品であるカップヌードルといえば、高校生や大学生など若年層の夜食や20代~30代の昼食といったイメージが強い商品です。実際、1971年に発売されてから基本的なターゲット層を若年層に据えてプロモーション活動を行ってきました。そのため若年層におけり知名度は高く売上も安定している商品である一方、60歳以上のシニア世代からはそれほど支持されず世代による購入量の差が激しい商品でした。

日清食品は、そうした状況を打開しシニア世代への売上も伸ばそうと新たな戦略を打ち出します。しかしながら、それはシニア向けに低カロリーや減塩といった商品展開をしていくという従来のプロモーション活動から大きな差が見られないものでした。結果的に、低カロリーや減塩を謳ったカップヌードルはシニア世代の心に響かず売り上げは伸びなかったため、日清食品のインサイトマーケティングは一度失敗に終わってしまいます。

しかしながら、そこから日清食品は新たに「アクティブシニア」に注目しました。65歳以上というシニア世代でありながらも新しいことに意欲的でSNSなどの情報発信も積極的に行っているアクティブシニアの食事事情を調査してみたところ、豪華な食事を食べている人の割合が多いことが分かりました。すなわちシニア世代が顕在化させているニーズはあくまで従来通りの「健康志向」ですが、健康のために自分の好みの味を諦めることには抵抗を示す人が多いという調査結果が出たのです。

この調査結果を踏まえ、日清食品はアクティブシニアをターゲットとした「カップヌードルリッチ」を発売しました。健康に配慮しつつもフカヒレスープなどの高級食材を使って味の満足感も高めたカップヌードルリッチは、発売7ヶ月で約1,500万食もの売上を記録したと言われています。シニア世代の健康志向の裏に「美味しいものであれば食べるものが若年層向けの商品であっても抵抗はない」というインサイトが隠れていることを見抜いて成功した事例です。

フォルクス・ワーゲン

 

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Keeps on rolling and rolling. #classiccar #skate #vwbeetle #volkswagen #vw

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フォルクス・ワーゲンがインサイトマーケティングに成功した1950年代~1960年代のアメリカでは、一般家庭向けの車も含めて「Think big.(大きいことは良いことだ)」という考え方が主流でした。そのため、平均的な世帯人数が3.33人という状況にも関わらずコストをかけて大型車を買う消費者ばかりでしたし、消費者から「大きい車がほしい」というニーズが出ているためメーカーもこぞって大型車を売り出していました。

そこに着目し、小型車「ビートル」のキャッチコピーに「Think small.」を掲げたのがフォルクス・ワーゲンです。今まで大きな車を買うことが当然であり、大きい車を買うことがステータスの一種であった消費者に対し、状況によっては小型車を買うことも優れた選択肢であるという価値観を提示しました。この結果、優れた広告戦略も手伝いコンパクトで性能も燃費も良いビートルはアメリカ国内で一気に人気車種へと変貌しました。今までは「大きいことが良い」という価値観の元でニーズを分析し大型車を販売していた自動車業界に対し、全く違う視点から小型車を提供することで「実用的なビートルを選ぶ消費者こそが賢い」というイメージを生み出すことに成功したのです。

これは「主流の大型車に人気が集まっているが、家族の人数など消費者の実状に合っていない」という現実を分析し、違う選択肢を提示したフォルクス・ワーゲンのインサイトマーケティングによる成功事例だといえるでしょう。このように今までとは全く違う価値観を生み出すような商品を生み出すこともインサイトマーケティングの成功事例であるとされています。

大戸屋


一般的に、飲食店はファミレスのように独立した店舗を設けるなど1階に位置している方が集客力を発揮すると言われています。しかしながら、大戸屋ホールディングスが運営する「大戸屋ごはん処」は1階ではなくビルの2階以上もしくは地下に位置していることが多い飲食店です。飲食店としては異色ともいえる立地を敢えて選ぶ背景には、主要なターゲット層である男性客だけではなく女性客も取り込もうという大戸屋の経営方針が関係しています。

今では男女問わず一人暮らしの大学生や外回りの営業を中心に、安くて簡単に栄養バランスの良い食事を摂れる場所というイメージを持っている定食屋ですが、大戸屋ごはん処が一般展開を始め得た当初の1990年代初頭の定食屋に対するイメージは「男性客がたくさん食べるために行く場所」というイメージが強く持たれていました。そのため女性は定食を食べたいというニーズがあっても大戸屋を始めとする定食屋には入りづらい雰囲気ができていました。

ここで野菜や果物が多めのレディースセットなどを出せば、女性客でも問題なく入れるようになるかもしれません。しかしながら、大戸屋はインサイトを分析した結果「女性が食べやすいメニューを作ってもらう」ことが女性の本来のニーズではないことに気付きました。そこで、現在のようにビルの2階以上もしくは地下に店舗を構え、女性が一人で入る際にも周りに見られることなく入店できる環境を作りました。これにより、1階に店舗がある場合と違って食べている時に周りの人から見られるリスクを減らすことも可能にし、結果として多くの女性客を呼び込むことに成功しました。

男性が多い場所に女性客を呼び込みたい場合、一般的には女性割引やレディースセットといった策を考える企業が多いでしょう。しかしながら、この大戸屋はGot milk?キャンペーンが「なぜ牛乳を飲みたいと考えるのか」という根本的なことに着目して消費者のインサイトをとらえたように、「なぜ女性客は定食屋に入りたがらないのか」という理由に着目して見事に新たな客層を掴むことに成功しました。企業視点で「こうすれば新規の顧客が来るだろう」と考えるだけではなく、消費者の立場に立って根本的なことを考えることで成功するという事例になっています。

ローソン


今ではローソンの代表的な商品の一つになっている「悪魔のおにぎり」も消費者インサイトを分析して成功した事例の一つです。悪魔のおにぎりは2018年10月に発売されました。通常、おにぎりというと「梅」や「鮭」など中の具材が明示されているのに対し、この悪魔のおにぎりは中に何が入っているのか分かりません。さらに、ローソンで長年人気だったシーチキンマヨネーズを超えるほどの人気商品にヒットした悪魔のおにぎりですが、実は発売前にテレビや雑誌で広告を流したわけでもありませんし、ローソン店内においても大々的な広告をしたわけではありません。

悪魔のおにぎりがヒットした背景には、Twitterを中心としたSNSでの盛り上がりがあります。消費者にとって、悪魔のおにぎりのパッケージは他のおにぎりとは違うため、思わずSNSに載せてみたいという意識を刺激されるものです。さらに「やみつき注意」と書かれているパッケージの下に肥満体型のタヌキのキャラクターがデザインされていることによって「カロリーが高くてとてつもなく病みつきになるような商品かもしれない」という意識を消費者に抱かせます。値段も他のおにぎりと変わらないことから、コンビニの利用が多い若年層を中心に「とりあえず試してみよう」という消費者が多いことは想像に難くないでしょう。

しかし実際、悪魔のおにぎりのカロリーはそれほど高いわけではありません。ローソンで人気のシーチキンマヨネーズが242kcalであるのに対し、悪魔のおにぎりのカロリーは219kcalと下回っています。しかも味は天かすや天つゆ、青さや青のりといった従来のおにぎりとは違うもののもう一度食べたくなる食材を中心に味付けされています。

これにより消費者は「悪魔のおにぎりは、パッケージのタヌキは太っているもののカロリー的には悪魔的ではない商品である」と食べる前に抱いていた印象と味との間のギャップを感じるようになります。そのギャップを「意外と低カロリー」や「パッケージが可愛くて食べたことのない味」というコメントとともにSNSに投稿することによって、今まで悪魔のおにぎりの存在を知らなかったユーザーにも認知が広がっていきます。さらにローソンの公式Twitterが「悪魔の虜になった人が続出している」という内容を投稿することで、「フォローしている人が食べていたことのある商品だから、今度食べてみよう」という購買意欲を消費者に与えることができるのです。

インサイトマーケティングというと、既存の商品ではカバーしきれない消費者のインサイトを見つけ出すようフォルクス・ワーゲンや大戸屋のようなマーケティング戦略が一般的です。しかしながら、このローソンの悪魔のおにぎりは「面白いものは共有したくなる」、「変わったものは共有したくなる」、「日常生活の中で面白いものを見つける人だと思われたい」という消費者のインサイトを刺激することによって成功している事例となっています。

無印良品

 

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【インテリア事例】 vol.35 こだわりのインテリアをそろえた、ひとり暮らし空間。 – 東京でのひとり暮らしのため、MUJI SUPPORT に参加いただきました。 「永く使えるもの」を基準に選んだオーク無垢材のダイニングテーブルは、薄い色味のフローリングとの相性も良く、どの動線からも利便性が高い場所に置かれています。 – サイトでは MUJI SUPPORT の事例を多数公開しています。 「無印良品 インテリア事例集」で検索し、ご覧ください。 – MUJI SUPPORT では、インテリア専門のスタッフが、収納の相談から部屋丸ごとのコーディネートまで理想の部屋づくりのお手伝いをします。 サービス内容や予約など、詳しくは「MUJI SUPPORT」で検索してください。 – #無印良品 #MUJI #感じ良いくらし #インテリア相談 #インテリアアドバイザー #MUJISUPPORT #インテリア事例 #インテリア #ひとり暮らし #ひとり暮らしインテリア #ダイニングテーブル

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インサイトマーケティングにおいて重要なのは、顧客のアンケート調査をすることではありません。いくら顧客の意見を取り入れてもニーズや潜在ニーズを入手できるだけで、顧客自身が気付いていないインサイトを入手することはできません。インサイトマーケティングは、企業の販売担当者や企画者、開発者が顧客目線に立つことによって仮定することがなによりも大切です。しかし、企業が主導するインサイトマーケティングだからといって、顧客の目線を完全に無視して戦略を立案することは不可能です。あくまで大切なのは、顧客がどのようなインサイトを持っているのかを推測することです。

無印良品は、その点で顧客の行動からインサイトを導き出すのが得意な企業として知られています。無印良品は「MUJI passport」というアプリによって顧客がいつでも無印の情報にアクセスすることができる環境を整えました。新商品を知りたい時はもちろん、なんとなくアクセスするだけで無印で使えるマイルポイントが貯まるなど顧客のニーズに合ったアプリとして愛用者数も多いアプリです。

しかし、もちろん無印良品も単に顧客サービスのために「MUJI passport」をリリースしているわけではありません。顧客がどの時期にどのような商品を探しているのか、実際に購入しているのか単にインテリア例を見ているだけなのかをアプリを利用する顧客の行動から分析し、どのような商品がインサイトを刺激できるかの仮定を立てることに役立てています。

実際、特に目的をもって入店しなくても無印良品の店内を見ていると「そういえばこんなものがほしかったけど、他の店舗では見かけたことがなかった気がする」という商品に出会うことも多いのではないでしょうか。それは単に無印良品の商品が独自性を持っているだけではなく、デジタルを通してアナログ世界へのインサイトを分析している結果なのです。企業の中で担当者がいくら顧客目線に立とうと思っても、実際の顧客の声を聞かなければ独りよがりになってしまうリスクが十分にあります。そうした企業になってしまうことを避けるためにも、この無印良品の事例を知り日々の顧客の購買行動だけではなく閲覧行動などからインサイトを分析する重要性を把握しておくと良いでしょう。

P&G


消臭剤というとP&Gのファブリーズを連想する人も多いでしょう。しかしながら、そのファブリーズも発売された1990年代の半ばからすぐに爆発的なヒットを記録したわけではありません。むしろ最初は売上が低迷してP&Gの中でも扱いに困る商品であったと言われています。

誰かの家に入った時や誰かの車に乗った時に、その人独自の生活臭を感じる経験は誰もが持っているでしょう。ファブリーズの開発担当者はそうした事例に着目し、消費者は「自分の家の嫌な臭いを解消したい」というインサイトを持っていると仮定しました。そのためタバコや服、家具に染みついた臭いを消せるファブリーズを開発し、実際にそういったテレビ広告を作って売上が上がることを期待していましたが、実際は開発者たちの想定通りに売上が伸びることはありませんでした。

「日常の気になる臭いを消せる」という分かりやすいメリットがあるにも関わらず売上が伸びないことに疑問を抱いた開発者たちは、購入した消費者を訪問して理由を聞きました。そうすると、明らかにペットの臭いやタバコの臭いが強い家に住んでいる人でも、それが日常と化しているため解消すべき問題ととらえていないことが判明したのです。確かに、誰かの家や車に独特な臭いを感じる人でも、自分の家に帰ってきた時に変な臭いを感じるっことはほぼありません。つまり、開発者たちが消費者のインサイトとして仮定してメリットを提示したものは、消費者にとって問題と認識されていなかったために感覚のズレが生じていたのです。

そこで開発者たちは、ファブリーズの使用目的を「嫌な臭いを感じた時に消す」ではなく「掃除や換気が終わった後に、リフレッシュのために使う」へと変更しました。テレビ広告も臭いを感じた時に消すために使っている広告から、掃除の終わりに換気しながら使う明るいイメージの広告へと変更しました。そうすることで消費者の「掃除が終わった後に自分へのご褒美があると嬉しい」というインサイトを刺激し、ファブリーズの売上は飛躍的に上昇しました。そうして使用者が増えることで、開発者たちが当初に意図していた「日常の嫌な臭いを消す」という使い方も浸透し、今ではファブリーズはP&Gの看板商品の一つにまで成長しています。

このP&Gの事例によって、同じ商品であってもプロモーション方法を間違ってしまうと消費者のインサイトを刺激できないことが分かります。すなわち、インサイトを正確に把握しないと、どんなに良い商品やサービスを作っても売上へと直結させることはできません。商品を発売する前の段階から消費者のインサイトをしっかり分析することが大切だという教訓になるでしょう。

インサイトを発見する上で重要なポイント

では、どうすれば消費者の抱えているインサイトを発見することができるのでしょうか。あるいは、不自然ではない程度にプロモーション活動によって企業が主導してインサイトを作り出すことができれば、今まで低迷していた商品であってもファブリーズのように売上を伸ばせるかもしれません。最後にインサイトを発見する上で重要なポイントを3つ紹介していきます。

実現可能かどうか

企業が需要を作り出すことはできるといっても、その需要を満たす商品やサービスを生み出す力が企業になければインサイトを発見しても意味がありません。運よくインサイトを発見できた場合でも、そのインサイトが自社企業によって実現できるインサイトかどうか慎重に確認するようにしましょう。

実現不可能なインサイトを刺激してしまうと、消費者の需要を生み出すだけで終わってしまいます。そうすると自社企業よりもブランド力や企画力、販売力がある競合他社にその消費者の需要を全て奪われてしまう結果に終わってしまう可能性が高くなるでしょう。自分で生み出したインサイトは自分で回収できるように、現実路線でインサイトを探っていくようにしましょう。

インサイトの理由を考える

消費者のニーズだけに着目をしていると、「〇〇をしたい」などの要望しか分析することがでいません。しかしながら既にGot milk?キャンペーンの事例で学んだように、インサイトは理由を考えることが何よりも重要です。「なぜ〇〇をしたいのか」、「〇〇を達成することで、消費者はどういう状態になることを望んでいるのか」を根本的に考えることで、本来のインサイトが見えてくるでしょう。

企業の立場でインサイトを考えていると「〇〇を売るためにはどうすれば良いのか」、「〇〇が売れる状況を作り出すにはどういった仕掛けが必要なのか」という視点にばかり囚われてしまいがちです。そういったことに拘泥せず、根本的な立場からインサイトを発見していくようにしましょう。

現在使われている状況を知る

市場に対して新たな価値観を参入させるためには、現在の市場がどのような状態であるのかということを知らなければなりません。フォルクス・ワーゲンが世帯人数が平均で3.33人の市場なのに大型車ばかりが売れているという矛盾する状況を見抜いて小型車の売上を伸ばしたように、参入したい市場の主力商品の情報だけではなく消費者がそれらの商品に対して本当に満足できているのかということを知る必要があります。

インサイトマーケティングに限らず、市場の新規参入の際には市場分析や市場の細分化、消費者のターゲティングが重要な要素になってきます。インサイトを知るためにも市場の分析は徹底的に行い、隠されたインサイトがないか細部までチェックしましょう。

インサイトを見抜き消費者に寄り添うマーケティング戦略を立てよう

消費者自身が自覚していないインサイトを見抜くことは非常に難しく、様々な事例があるもののまだあまり方法は確立されていません。しかしながら現在のようにどの市場でもSNSの力が大きくなっていることから、一度インサイトを見抜くことができれば零細企業であっても大きな売上を記録することは決して不可能ではありません。

また、消費者の本質を見抜くインサイトマーケティングに、さらに消費者の購買意欲を刺激するインフルエンサーマーケティングやコミュニティマーケティングを併用することによって、その効果は爆発的なものになるでしょう。もしそのような効果を実感したいのであれば、「コラボマーケティング」などの専門家の力を借りるのが確実です。せっかく見抜いたインサイトをさらに効果的に運用できるように最適なインフルエンサーの紹介や起用方法の相談に乗ってくれるでしょう。消費者により一層寄り添うマーケティング戦略を実行するためにも、ぜひ専門家と力を合わせて実行に移してください。

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